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2025年
1月22日(水)
23:44

コラム集

●つむじ風 1月22日
 「溶接魂を持って最後まで全力を尽くすことを誓います」。先日、花巻市内で開かれた第6回県高校生溶接技術競技会における選手宣誓の一幕。力強い宣誓に違わぬ競技会だった▼県鉄構工業協同組合創立50周年を記念し、昨年から高校生と社会人の競技会を同日に開催した。同組合の佐々木史昭理事長は、社会人の競技会を見学することで、「溶接ぶりや技術はもちろん、立ち振る舞いも見てほしい」と高校生に呼び掛けた▼社会人の競技会を見学する高校生の表情は真剣そのもの。昨年も出場した女子高生は、使っている道具にも注目していた。社会人の競技会で参考になる点はあるか尋ねると、「自分との実力差があまりにもありすぎる」と率直な感想を話す▼その女子高生は、先生から勧められ、楽しそうだなと思って溶接を始めたという。自分の技術が目に見えることを溶接の魅力に挙げる。「楽しそうだなと思って始めたのに、今はちょっと…」と口にする。「意識して溶接をすると、楽しい時と楽しくない時がある」との思いを聞いた時、溶接魂に触れた瞬間だった。
●つむじ風 1月21日
 県が宮古駅前付近の県道宮古停車場線「栄町地区」で計画する無電柱化事業。電線共同溝設置工事は24年内で発注済みとなっており、今後、現地で工事が進められていく▼事業は、歩道に電柱が乱立し通行の支障や景観を阻害している状況から、整備により安全で円滑な交通の確保と良好な景観形成を図るもの。全体計画は、駅前の東側歩道53㍍、西側歩道59㍍の計112㍍で、工事は25年度の完成を見込んでいる。その後は電線管理者側がケーブルの敷設などを実施することになる▼駅前に続く商店街の「末広町通り」でも、宮古市側が無電柱化事業を進めているところ。整備によって車道の幅を狭め、歩行空間を広く再編することで、歩行者優先の道路にしている。工事は最終段階に入っており、3月には完成する予定だ▼宮古の中心部で県や市が進める無電柱化整備が完了すれば、市の玄関口の宮古駅から市街地の商店街に向けて、美しく開放的な街並みが形成されることになる。歩行者の安全性の向上とともに、まちなかのにぎわいや魅力の創出につながればと思う。
●つむじ風 1月20日
 きょう20日は、一年で最も寒い時期とされる大寒。除雪担当者らは天気予報を確認しつつ、未明から除雪に出られるよう、飲酒もせずに準備していると聞く。今冬は、県内の農場で立て続けに高病原性鳥インフルエンザが発生していることから、家畜伝染病への対応にも怠りなくと考えている建設企業も多いのではないか。業界団体の新年会の席などでも、そのような話題がよく挙がる▼県では、家畜伝染病の発生時の体制強化に向けて、県建設業協会など関連団体と協定締結を進め、これまでに関連する全団体と協定を結んだ状況。安定的かつ迅速に対応できる体制が整ったとしている▼建設関連団体が担う殺処分した家畜の埋却作業に関しては、埋却地の現地確認が進んできているものの、未だ確認できていない農場も多いと聞く。他県では、埋却地の現地確認を終え、全ての農場の処分地が確定している地域もあるようだ▼現地確認を終えていない状況に、「岩手の体制は遅れていると指摘された」と話す、業界関係者の声も聞かれる。埋却地の現地確認が急がれる。
●つむじ風 1月17日
 23年の本県建設業における定期健康診断有所見率は68・0%。全産業の64・6%を上回り、道路貨物運送業の74・3%に次ぐ高さ。中でも「血圧」の割合が29・9%と主要業種の中で最も高く、「血中脂質検査」は34・1%と道路貨物運送業の38・1%に次ぐ高さ▼長時間労働は高血圧リスクを高め、脂質代謝異常の原因となる可能性があるとか。24年4月から時間外労働の罰則付き上限規制が適用となった建設業と運送業での数値を見る限り、やはり何らかの因果関係ないし相関関係が認められるのか▼建設業の中には「いわて健康経営認定事業所」の認定を受けている会社も多い。働き盛り世代の健康づくりを推進するため健康経営に積極的に取り組む事業所を認定するもので、24年度は621事業所が認定を受けている▼その中でも特に優れた取り組みを、県は「いわて健康経営アワード」として表彰している。今年からは「脳卒中予防対策特別賞」も創設され、入賞企業ではボトムアップ的な社員の意識向上も図られているという。健康経営は企業の健康でもある。
●つむじ風 1月16日
 本紙では、10日付から全3回にわたって、上澤和哉県土整備部長の新年インタビューの記事を掲載した。大きなテーマとして「国土強靱化」「予算」「建設業振興」の三つを設定し、県土の発展に向けた思いなどを聞いた▼上澤部長は、防災・減災対策や老朽化対策の重要性などを説くとともに、「県民に対し、対策の効果をしっかりと発信することが重要」と強調。切れ目なく防災・減災対策などを講じるためにも、引き続き国側に働き掛けながら、公共事業予算の安定的・持続的な確保に努めていく考えを示した▼建設業が地域の担い手・守り手として、社会資本の整備をはじめ、災害対応や防疫措置などに当たっていることにも触れ、「われわれとしても、建設業を誇りに思っている」と語っていたことも印象深い▼日々の取材活動などを通じ、広大な県土を有する岩手において、同部や建設業が担っている役割の重要性を改めて実感する。建設行政・業界が一体となって、懸命に地域を守っている。強靱な土台とも言うべき存在が、県民の日常生活を支えているのだ。
●つむじ風 1月15日
 国土交通省と厚生労働省は、建設業の人材確保・育成に多角的に取り組むため、25年度予算案の概要を取りまとめた。建設キャリアアップシステムの活用促進を図りながら、両省が連携し建設業の人材確保・育成に取り組む▼「地域の守り手」と位置付けられている建設業。将来の建設業を支える担い手の確保に向け、特に若者や女性の建設業への入職や定着の促進などに重点を置きつつ、担い手の処遇改善や働き方改革、生産性向上を一体的に進める▼人材確保や魅力ある職場づくりの推進に向け「つなぐ化」事業を継続。同事業では、若年者の建設業に対する理解や定着促進を図るため、工業科のみならず普通科を含めた高校や高等専門学校の先生・生徒らと建設業界がつながる機会として、出前授業や現場見学会などを実施する▼県内では、建設業ふれあい事業や現場見学会、ガイドブック・パンフレットの作成など人材の確保・育成に向けた取り組みを続けている。いずれも建設業と人財をつなぐ重要な取り組みとして、これからも続けていかなければならない。
●つむじ風 1月14日
 県内の各地域に立地する認定職業訓練施設や県立職業能力開発施設。施設で学ぶ若年技能者が参加する県若年者技能競技会の取材や入賞者に話を聞いた際、競技会に向けて練習を重ねてきた様子や、練習で培った技能などを仕事に生かしていこうとする姿勢が感じられる。さらなる研さんに励み、次代を担ってほしい▼11日から13日にかけて、県内でも多くの自治体で二十歳の集いが催された。毎年、新成人の数を気に留めるが、総務省が発表した1日時点の人口推計によると、成人年齢の18歳となった06年生まれの人口は109万人▼推計を開始した1968年以降、最少だった前年からは3万人増加した。ただ、過去2番目の少なさとなっている▼減り続ける担い手の確保に向け、訓練施設の果たす役割も大きい。異業種から建設業への転職、UターンやIターンした人たちの受け皿などに建設業がなるべく、企業と訓練施設の連携も有効では。先日取材した同競技会の入賞者にも、30歳で異業種から建設業へ転職して、訓練校で技術力を磨く訓練生が見受けられた。
●つむじ風 1月10日
 この時期のあいさつの定番「皆さん穏やかな新年を迎えられたことと…」には、ほど遠いスタートとなった2025年。県建設業協会盛岡支部と二戸支部の皆さん、昼夜を分かたずの作業、大変お疲れ様でした▼家畜伝染病対策に関する県のニュースリリースには、必ず「県建設業協会の協力を得て作業を実施」の一文が入っており、官民が連携して危機に当たっている姿勢を強く打ち出している。かつての「協定があるから出るのは当たり前ですよね」からは大きな前進だ▼それでは、危機に際して対応可能な建設企業をいかにして維持していくか。いわゆる「限界工事量」の考えが打ち出されたのが16年。だいぶ一般用語化し、納得できる部分もある一方で、建設業を社会的なコストと見なす議論に陥る危うさも感じる▼事業量も限られる中「夢と働きがいのある建設業」という産業政策と、「災害時に最前線で活動する建設業」という危機管理を同時に考えることは容易ではない。しかしこの問題に取り組まずに、県民の安全・安心を守ることができるだろうか。
●つむじ風 1月9日
 県建設業協会(向井田岳会長)の正副会長や職員らは、2025年の仕事始めで、本県建設産業界の発展に向けた決意を新たにした。向井田会長は、役職員が一致団結し、地域建設業の社会的責務を果たしていくよう呼び掛けた▼盛岡市、軽米町の県内2地区の農場において、新年早々に発生した高病原性鳥インフルエンザ。県建設業協会盛岡支部(樋下光支部長)、二戸支部(坂本昌彦支部長)の会員らは、埋却溝の整備などの防疫作業に尽力した。地域の守り手として、地元に建設業が根差しているからこそ、迅速な措置が可能だったのではないか▼2地区でほぼ同時に鳥インフルエンザが発生した事態を踏まえ、今後の課題などもあるだろう。同協会本部では、両支部による対応を整理するとともに事例を共有し、体制を強化していく構えだ▼県土整備部などの職員らも、防疫対応に力を尽くした。建設行政・業界がまさに「組織力」を発揮した例だ。今年はまだ始まったばかり。行政・業界がさらに一致団結し、岩手のインフラ整備を盛り上げる年にしたい。
●つむじ風 1月8日
 道路整備や道路利用、道路管理を合わせた道路分野では、年間1・8億㌧のCO2を排出し、国内総排出量の約18%を占めている。昨年末、国土交通省は道路分野の脱炭素化の取り組みを推進するため「道路分野の脱炭素化政策集Ver1・0」を公表した▼政策集では、四つの基本的な政策の柱に沿って、取り組みの目標やロードマップを設定。協働による2030重点プロジェクトとして、道路管理者の協働や関係者の連携により推進する施策を取りまとめている▼国直轄道路では、道路設備・施設や道路照明の電力消費によるCO2排出を中心に、2030年度までに13年度比で約7割の削減を目指す。その中で、自転車を活用する施策を展開し、13年度比で約28万㌧の削減につながるというのが印象的だった▼近年、激甚化・頻発化する自然災害は、本県にも大きな爪痕を残している。その自然災害を引き起こす要因として考えられる地球温暖化を抑えるには、CO2排出量の削減が欠かせない。一人ひとりができることを考え、環境負荷低減につなげたい。
●つむじ風 1月7日
 盛岡市と軽米町の養鶏場で、今年に入り相次いで感染が確認された高病原性鳥インフルエンザ。早期の収束に向け、新年から作業に当たる県職員や建設業者など関係者には頭が下がる思いだ▼防疫措置での殺処分は盛岡市内の養鶏場で約12万羽、軽米町内では約5万羽に上る。地元の建設業者は重機による埋却溝の掘削から、殺処分した鶏の溝への投入、消毒までの埋却作業を担い、盛岡分については6日に終了。軽米では作業が続く▼県では、2市町で立て続けに発生した鳥インフルエンザに関連性はないとみているが、今シーズン国内で発生した農場を見ると、昨年10月17日に北海道で1例目が確認されて以来、14道県で20事例が発生(6日時点)。前シーズンの10県11事例を上回る発生数で推移している▼県内では県や県建設業協会の支部などが合同で、管内ごとに鳥インフルエンザ発生時の埋却訓練を実施しているところ。地域の産業を支えるため、暮らしの安全・安心を守るためにも、今回の事例を踏まえ迅速な防疫対応に備えておく必要があるだろう。
●つむじ風 1月6日
 24年の元日に発生した能登半島地震から1年が経過した。復旧・復興は少しずつ進んでいるだろうが、まだまだ道半ば。改めて、被災された皆様にお見舞い申し上げますとともに、一日も早く元の暮らしを取り戻されることをお祈り申し上げます▼真の復興まで道半ばなのは、東日本大震災の被災地も同様。政府は、「第2期復興・創生期間」後の5年間の復興財源に、1兆円台後半を確保する方向で検討しているとされるが、被災地に寄り添っての十分な手当てが望まれる▼災害の多い年が続き、災害のたびに建設業界が対応しているものの、いつまで地域の守り手として対応できるか。業界は長年、人手不足の深刻化で災害時に十分な活動ができなくなることを訴え続けているが、災害の規模などによっては「その日」が遠くないのではと危惧もする▼建設業の担い手確保に向けて、働き方改革が必要なことは誰もが認識しているものの、課題が山積している。一つひとつの障壁を着実に取り除いていくため、官民の共通認識、連携による取り組みは決して欠かせない。
●つむじ風 12月27日
 24年の本紙は本日付で納刊となります。今年1年ご愛読いただき、心より感謝を申し上げます。25年も建設産業界の社会的価値の最大化に向けて、有意義な情報発信に努めてまいります▼業界団体と行政機関との意見交換を取材していると、かつての木で鼻をくくったような対応を覚えている身としては「本当に良いカタチで意見交換ができるようになったな」と感動すら覚える。「ガス抜きにしかならない」と手厳しい声も聞こえるが、少なくとも歩み寄りの努力が見えることは大きな前進▼後はこの議論をいかに良い結果につなげるか。建設産業の健全な発展を図るため、必要ならば新しい取り組みを始めればよいし、必要ならば何時間でも意見交換すればよい。ただし意見交換も新しい取り組みも、それ自体が目的ではない▼究極的な目的は、県民の生命と財産を災害から守り、県民の豊かな暮らしと幸福を創造すること。この点は、官民ともに思いは一つのはず。もう少し言いたいことがあったが、ここで文字数が尽きた。それでは皆さん、良いお年をお迎えください。
●つむじ風 12月26日
 年の瀬を迎え、今年の出来事を振り返っている読者の皆さんも多いのではないか。実は筆者としても、取材を通じて印象深いことがある▼県土整備部ではこの1年、上澤和哉部長のリーダーシップのもと、建設事業などのPRに力を入れていたように感じられる。「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」の事例集の作成などをはじめ、県庁県民室や各地区合同庁舎でのパネル展の開催、いわて建設業みらいフォーラム2024のオンライン配信、SNSの活用など、さまざまな形で社会資本整備の重要性などを県内外に発信していた▼同部県土整備企画室によると、24年度の県庁県民室を利用したパネル展の企画数は、全部局中トップとのこと。同部では「職員一人ひとりが広報マン」として、事業や取り組みなどのPRに力を入れている▼建設業の担い手の確保は、将来のインフラの整備・維持管理のための重要な課題の一つと言える。「身近な社会資本の重要性が少しでも、若い人をはじめ皆さんに伝われば―」。そのように思い、取材をした1年だった。
●つむじ風 12月25日
 耐震化が未実施だった基幹施設等に被害が生じたことで広範囲で長期の断水が発生した能登半島地震。改めて、耐震化の遅れと重要性が認識された▼国土交通省は、国民の水道事業等に対する理解促進に向け「水道カルテ」を作成・公表。カルテでは、料金回収率と耐震化率などを指標として設定し、視覚的にこれらの現状の確認や他の水道事業者との比較を可能にした▼本県では29水道事業者のデータが示されている。耐震化率・料金回収率がともに高いグループⅡ―0は盛岡市と奥州金ケ崎行政事務組合、続く同Ⅱ―1が山田町と岩手中部水道企業団。一方、西和賀町は基幹管路の耐震適合率と浄水施設・配水池の耐震化率はいずれも0%となっている▼耐震化率等の県内平均は、基幹管路の耐震適合率が54%、浄水施設が43%、配水池が41%。今後の人口減少を考慮すると、水道カルテが示すデータからは、現在の体制を維持できるのかどうか考えさせられる。「運営基盤の強化」と「施設耐震化の加速化」は早急に対策を検討・実施していかなければならない。
●つむじ風 12月24日
 住田町世田米で昭和橋の架け替え事業を進めている県は、先週、橋梁の上部工工事を公告した。現地では橋脚工や護岸工が推進中で、新橋整備はさらに進展していく▼同町中心部で気仙川に架設されていた旧橋は、橋脚の間隔が狭いなど、増水時に流木等が川の流れを妨げ、浸水被害を及ぼす恐れがあることから事業が計画された。新橋は橋長72㍍、全体幅員7・8㍍の「1車線+2歩道」で整備。上部工形式は、2径間連続プレビーム合成桁橋となっている▼新橋も旧橋と同じ位置に建設しており、現在は橋脚工の仮締め切り工や左岸側で護岸工が進められている。下部工は25年6月の完成を計画。公告された上部工では桁架設工323・7㌧などを盛り込んでおり、工期には492日間を設定している▼新橋の供用開始時期は上部工の発注時期を見直したことで、これまで見込んでいた26年3月よりも延期となる見通しだ。完成すれば町を象徴する新たな景観が形作られるだけでなく、重要な生活路線としての役割も担うだけに、一日も早い完成が求められるだろう。
●つむじ風 12月23日
 2024年も残り一週間程となり、年始のあいさつとして年賀状を書いている読者、企業も多いことかと思う。個人的にも鋭意進めているが、特にもプライベートなものは年々減ってきているのを実感する。友人の両親をはじめとする親戚の不幸による喪中、志半ばにして他界した友人も出てきている▼近年は、年賀状じまいする知人も増えてきている。企業でも増えてきている状況で、5割の企業が年賀状じまいしたとの調査結果もあるようだ。コストや事務作業の削減、環境保護といったSDGsの観点などが、理由に挙げられている▼日本の文化や伝統を重んじる企業の場合は、年賀状を続けている傾向にあるともされる。新年のあいさつ一つとっても、さまざまな価値観が尊重されるべき時代になっているのだろう▼個人間でも同様で、担い手の育成・確保が課題となっている一方、労働力の確保の観点では、中堅やベテラン社員の存在も欠かせない。各世代が互いの価値観を尊重し合い、少数の世代がいたとしても、居心地の良い職場を作ることが大切に思う。
●つむじ風 12月20日
 このところ耳にすることが増えた「フェーズフリー」という言葉。フェーズフリー協会代表理事の佐藤唯行氏が2014年に提唱した概念で、「日常と非常時のフェーズに関わらず生活の質を向上させるよう、日常に使用する商品やサービス、インフラなどをデザインする」というもの▼身の回りでは、ハイブリッド車や加圧ボールペンなどを思い浮かべればイメージしやすいだろうか。公共施設における事例としては、建物の屋上を避難場所として活用できるほか、商品を立体的に陳列することで商品を探す楽しさを追求しながら非常時の備蓄も兼ねる徳島県鳴門市の道の駅などが挙げられる▼「第6次社会資本整備重点計画」の検討の中でも、フェーズフリーへの取り組みが論点の一つに挙げられている。国交省の視野に入っているということは、今後のインフラ分野におけるキーワードの一つになるかもしれない▼「日常の生活を豊かにするものが非常時にも役に立つ」。これって建設産業のことじゃないか。地域建設産業の健全な維持と発展も立派なフェーズフリー。
●つむじ風 12月19日
 県電気工事業工業組合久慈支部や同青年部久慈支部の会員らは24年度、県立久慈工業高等学校(水野扶佐史校長)の電子機械科の生徒を対象に、第二種電気工事士の資格取得を支援しようと、計4回にわたる講習を実施した。学科講習2回、実技講習2回のプログラムを企画・実施し、県内の電気工事業界の担い手の育成に力を注いだ▼5日夕方からは、実技試験のための講習会を開催。青年部や会員企業の社員ら11人が同校を訪れ、2、3年の生徒5人に実技試験のポイントや自分たちの技術などを伝えた▼先生方に話を伺うと、「これほど多くの皆さんに集まってご指導をいただき、驚いている。本校としても、大変ありがたい」と語っていた▼生徒らは、先輩技術者からのアドバイスを受け、技術を身に付けようと真剣なまなざしだった。「多くの建設工事に携わり、たくさんの人に笑顔を与えたい」と語る生徒も。講習の経験から、電気工事士になりたいとの思いを強めた様子も伺えた。和気あいあいとした雰囲気も感じられた。学びの意欲は、技術の継承につながる。
●つむじ風 12月18日
 1994年12月28日午後9時19分、八戸市の東方約180㌔の三陸沖でマグニチュード7・6の大規模な地震が発生。八戸市で観測した震度6を最大に、本県気象庁は「平成6年三陸はるか沖地震」と命名した▼今年で三陸はるか沖地震から30年となり、盛岡地方気象台ではホームページ内にサイトを設け、災害を振り返っている。被害は八戸市で集中。1階がつぶれた施設や施設内の歪んだ壁など被害状況の写真も掲載しており、被害の大きさを物語っている▼三陸はるか地震では、断層が地下の深い場所で大きくずれ動いた一方で、津波を生み出す要因となる浅い場所(海底付近)でのずれ動いた量が少なかったことで、大きな津波が発生しなかったと考えられている。ただ、八戸市や宮古市では、50㌢の津波が観測されたという▼三陸沖から根室沖の領域では、過去にマグニチュード7程度の大規模な地震が発生後、さらに規模の大きい巨大地震が続いて発生する事例が確認されている。災害を振り返り、改めて地震や津波など災害に対する防災意識を高めたい。
●つむじ風 12月17日
 10月に宮古市田老で起工式を実施した、田老発電合同会社の夜間連系太陽光発電所。今月上旬に現地を訪れると、太陽光パネルの設置がかなり進んでいた。運転開始は1年後の25年12月を予定しており、今後も整備の進捗が図られていく▼施設の建設は、宮古市の脱炭素先行地域づくりの一環で実施されるもの。発電所では昼間に発電した電気を蓄電設備に充電。夜間に送電することで、隣接する既設の田老太陽光発電所とともに、昼夜を問わず安定的な電力の供給を目指す▼合同会社(日本国土開発㈱、宮古市が出資予定)では、震災の津波で被災した防潮堤沿いに、太陽光パネル5127枚(総容量2969キロワット)、蓄電池1基(容量7987キロワット時)などを整備する。現地では作業が本格化し、パネルの設置は山側でだいぶ進んでいるように見えた▼電気は地域新電力会社が買い取り、市内の公共施設を中心に供給される計画だ。再生可能エネルギーの導入を着実に進め、エネルギーの地産地消と脱炭素に向けた取り組みを加速させてほしいと思う。
●つむじ風 12月16日
 奥州市が建設を進める水沢中学校の新校舎は、供用開始時期が当初予定の25年8月から26年1月に見直されることとなった。泥土状態の土壌への対応や今夏の天候、職人不足による工期の見直し、教職員の業務状況や環境測定の見直しなどを要因とする▼祈願祭の際、施工業者では猛暑や大雨、大雪といった気象をはじめ、物価高騰や建設業での時間外労働の上限規制適用、週休二日への対応を課題に挙げ、「抱える多くの課題を、交渉を含めて取り組んでいければ、今後の奥州市の工事にも役立つのでは」と話していた。懸案した事項が生じたとも言える▼供用開始時期の見直しは、同校の保護者宛てに通知済みとする。見直しについて、施工業者らに批判的な目が向かないことが願われる▼施工業者では、品質や安全確保、一日も早い引き渡しを目標にするとともに、作業員への配慮にも目を配りながら施工を進めている。現場で働く作業員らも、一日でも早く一日でも長く、快適に新しい施設で、生徒に学校生活を送ってほしいとの思いで懸命に作業に励んでいる。
●つむじ風 12月13日
 県は25年度から県営建設工事の総合評価落札方式に「チャレンジ型」(仮称)を試行導入する。施工実績評価を緩和し、施工実績の有無が評価に影響を及ぼす項目を極力除外する。県内各審査指導監から1~3件程度を実施する予定とのこと▼各審査指導監で1~3件とはやや少ないかなと思っていたが、チャレンジ型で実績をつくった企業は通常の総合評価に参加できるようになるため、段階的に間口を広げていこうとする考えのようだ。所期の目的を達成できるような運用がなされることを期待する▼4月からは、工事種別に応じた評価項目の再区分も行われる。工事種別により評価項目を「土木系」と「土木系以外」に分類し、土木系以外では「災害活動の実績等」「無償奉仕活動の実績」「維持修繕業務等の実績」が評価項目の対象外となる▼今回の見直しにより、土木系を主力とする総合建設業と専門工事業それぞれが、お互いの力を十分に発揮できるようにしたい。その工事に相応しい受注者を選定するという本分に立ち返れば、悪い選択ではないと思われる。
●つむじ風 12月12日
 県土整備部県土整備企画室は、「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策の実施状況・事例等」の11月改訂版を作成した。事例集では、県内の5か年加速化対策の取り組みを分かりやすく整理している。ぜひ多くの県民と県外の皆さんにも、ご覧いただきたい▼政府は、5か年加速化対策の対象期間を21年度から25年度までの5年間、事業規模をおおむね15兆円と設定した。激甚化する風水害や切迫する大規模地震等への対策などを柱に、全国的な取り組みが進められている。本県においても、局所的な短時間豪雨・洪水が発生していることなどを踏まえ、強靱化施策を推進している▼県土整備企画室は、事例集の作成に当たり、県内全33市町村における県の建設事業をピックアップ。道路、河川、砂防、港湾の事業分野と合わせて、「効果事例」「現在実施中」「今後実施予定」に整理している▼5か年加速化対策が最終盤を迎える中、総括的な視点が重要に。発注者、地域建設業者のそれぞれの目線を生かして事業効果をPRし、今後の予算確保につなげたい。
●つむじ風 12月11日
 岩手労働局の粟村勝行局長は、いわて年末年始無災害運動の取り組みの一環として、安全パトロールを実施。盛岡市内で進む国道46号西大橋床版工事現場を訪れ、冬季特有災害の防止へ自覚を持って取り組むことを求めた▼パトロール後に粟村局長は、足場に関して「全国的に風による崩落や転落する事例が発生している。気象状況を把握し、作業前に点検するなど対応してほしい」と注意喚起し、現場での作業前点検の重要性を強調。改めて、現場における強風、暴風、突風の影響を確認したい▼粟村局長は、作業計画と作業手順書の作成と、それに基づく手順の順守も呼び掛ける。現場は一人でなくチームで動いているもの。企業ごとに独自のルールがあるかもしれないが、チーム内のルールを守ることが大切だろう▼県内では朝晩の冷え込みが厳しくなり、今後は凍結・積雪が予想される。年末を控え、「ここまでは作業を進めておきたい」との思いが出てくるかもしれない。はやる気持ちを抑え慎重に作業を進め、まずは年末までを無事故・無災害で乗り切りたい。
●つむじ風 12月10日
 釜石市は、三陸沿岸道路の釜石両石インターチェンジ(IC)のフル規格化を求めていくため、フル化必要性検討業務を先月入札。年度内で、交通の現状やニーズなどを調査していく▼同市両石町に位置する同ICは、大槌町側へのハーフICで設置。東日本大震災の6日前に開通した三沿道「釜石両石―釜石北」区間に位置し、震災時は避難経路や支援物資輸送など「命の道」として機能した▼釜石港公共ふ頭や整備が進む同市の新庁舎からは、三沿道にアクセスする最寄りのICだが、ハーフICのため、近辺のフルICとなる釜石中央ICを使う場合、将来的な市街地の交通量の増加や、津波浸水エリアを通らなければならないことなどが課題になっていた▼市では今回の業務で、より具体にフル化に向けた課題などを整理し、国への要望資料とする方針だ。三沿道では、他のICでも地元からフル化を求める声が上がっている。沿岸地域の縦軸幹線として産業振興や災害時の対応を支えるためにも、アクセス向上を図る取り組みを進めていく必要があるだろう。
●つむじ風 12月7日
 山梨県大月市の中央自動車道上り線笹子トンネルで天井板のコンクリート板が落下し、走行中の車3台が下敷きとなって9人が死亡した事故から2日で12年が経過。現地では慰霊式が開かれた。式の様子や遺族らの声などが報じられたが、当時の衝撃は今でも思い出される▼同日は、県県土整備部道路環境課が高校生と協働で行っている橋梁点検が、一関工業高校の土木科3年生を対象に開かれた。橋梁点検の場でも、インフラメンテナンスの重要さが叫ばれるようになったきっかけとして、笹子トンネルの天井板落下事故について説明されていた▼現在の高校生は、当時を覚えてない生徒が大半と思われる。ただ、説明や点検などを通して、その重要さは生徒に十分伝わっていた様子が見受けられた▼5年に一度のサイクルで行われている構造物の定期点検の結果について見ても、修繕などの措置が必要な構造物は多く見られ、安全・安心の確保へ必要な予算を確保し、着実に進むことが願われる。専門知識を学んでいる高校生が、関係する職業に進んでほしいと思う。
●つむじ風 12月6日
 今年も1日から「いわて年末年始無災害運動」がスタートした。この運動は、年末年始における労働災害の防止に向けて、岩手労働局と岩手労働災害防止団体連絡協議会が主唱して06年度から実施しているもの。事業者は「冬季特有災害の防止」「リスクアセスメント・危険の見える化の実施」「安全決意宣言の実施」「労働災害防止団体が実施する年末年始無災害運動への参加」などに取り組む▼2日には矢巾町流通センターでキックオフセレモニーが催され、労働局や労働災害防止団体の役職員が、のぼり旗を運動期間の日数と同じ62本設置した。設置に当たって労働局の粟村勝行局長は「無災害への思いを込めながら、のぼり旗を設置したい」と話した▼運動期間は25年1月31日まで。期間中には安全パトロールなどを通して「積雪・凍結による転倒災害・墜落災害の防止」「車両等のスリップ事故等の労働災害の防止」をはじめとする冬季特有災害の防止が呼び掛けられる。労働災害防止に特効薬はない。基本に従い、日々の無事故無災害を積み重ねていきたい。
●つむじ風 12月5日
 県と県建設業協会(向井田岳会長)が先ごろ開いた「いわて建設業みらいフォーラム2024」。現場で活躍する技術者の発表や、パネルディスカッションなどが行われた。当日の様子は、YouTubeで配信しており、ぜひご覧になっていただきたい▼同フォーラムは、次世代を担う若者をはじめ、県民の建設業への理解や関心を高めることを目的に、13年度から実施しているもの。向井田会長は冒頭のあいさつで、「苦労して手掛けた道路や建築物などが完成した時の感動は、建設業でなければ味わえない」と高校生に語り掛けていた▼フォーラムでは、技術者や発注者の視点から、建設現場をつくり上げる魅力を生徒らと共有した。県建設業協会青年部連絡協議会が製作した除雪動画も映し、社会資本整備だけでなく、昼夜を問わず除雪に貢献していることも伝えた▼建設業界団体からは、建設業の魅力発信に向けて、行政・業界の一層の連携を求める声が上がっている。フォーラムを進化させながら、共に担い手確保への取り組みに工夫を凝らしたい。
●つむじ風 12月4日
 田瀬ダム竣工70周年を記念し11月30日、クレストゲートの点検放流が行われた。午前と午後の点検放流に、県内外から400人を超える来場者が訪れ、70年ぶりという歴史的な瞬間を見守った▼ゲートは1門ずつ計6門開き、2㌢、4㌢、最大6㌢開いた。「サー」という音とともに濁水が流れ落ち、6㌢の開放になると音が力強くなり水流も勢いを増し、雪化粧をまとったような姿に。6㌢開放時は6門で毎秒19㌧なので、10分間で1万1400㌧ほど放流したことになる▼当日、濡れてもよい服装で現地に赴いた。左岸下流広場では、バルブ放流の段階から水煙が飛び散り、点検放流でも降り注いだ。愛好家の中では「ダム汁」というらしい。カメラには注意したが、メガネや髪はダム汁でびしょ濡れに…。ただ、冷たさよりも喜びが上回っていた▼来場者からは「県内のほかのダムも訪れたい」「また放流の様子が見たい」との声が上がっていた。今回の点検放流をきっかけにインフラに対する興味や関心が広がり、インフラツーリズムの拡大にもつながってほしい。
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