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2025年
7月13日(日)
08:56

コラム集

●つむじ風 7月12日
 県内の葛巻町、一戸町、二戸市を流れる一級河川馬淵川のうち、上流となる葛巻町と一戸町の流域について、県は「特定都市河川」に指定する構えでいる。同川は、22年8月の大雨で、大きな被害が発生。流域関係者が一体となって取り組む流域治水が進められている▼「特定都市河川」への指定は、流域治水の取り組みの一つ。指定によって、農地などの締め固められていない土地で行う、1000平方㍍以上の雨水浸透阻害行為について、調整池などの雨水貯留浸透施設の設置、知事の許可が必要となる▼雨水浸透阻害行為は、農地や原野の宅地化、駐車場化など。「特定都市河川」への指定により、雨水流出を抑える対策を強化し、流域のさらなる安全・安心の確保に取り組むとしている▼防災・減災に向けて、河川整備とともに、各種周知活動にも行政では力を入れている。今年度は、子どもたちを対象とした防災学習を取材する機会にも多く恵まれているが、防災力の強化に向けて、災害への備えが着実に浸透してほしい。治水対策の一層の推進も期待したい。
●つむじ風 7月11日
 「スケジュールの関係上、たまたまですよ」と言われるだろうが、総会や祝賀会などの席に誰が来るかは、主催者に対するメッセージの一つだと思っている▼東日本大震災前の10年度、県建設業協会の総会で知事代理の祝辞を述べたのは県土整備部の技監だった。当時は、岩手・宮城内陸地震への対応などで地域建設業の社会的存在意義が見直されつつも、コンプライアンス問題や長期的な公共事業費の縮減などで官民の距離が遠かった時期だった▼6月下旬に開かれた「北岩手・北三陸横断道路整備促進期成同盟会」の決起大会。来賓の顔ぶれからも、事業への期待が感じられた。地元選出の国会議員、県や東北地方整備局の幹部職員らが出席し、県北地域を横断する広域道路ネットワークの早期整備への理解を示していた▼昨年度は達増知事本人も出席し、事業の進捗に直接言及した。北・北道路道路の整備に対する社会的な要請は年々高まっていると感じる。あとは当局の決断次第か。来賓の顔ぶれに負けないよう、民間からも県民運動として後押ししていきたい。
●つむじ風 7月10日
 7月は「河川愛護月間」。国土交通省などは、河川愛護意識の高揚を図るため、さまざまな運動を展開している。河川愛護月間における広報活動の一環として、絵手紙を広く募集しているとのこと。募集テーマは「川遊び~川での思い出・川への思い~」のようだ▼県内に目を向けると、いくつもの川が流れている。河川は、豊かな自然を育み、人々の心を癒やす空間も提供している。建設行政や建設業界では、地域に親しまれる川づくりに取り組むとともに、激甚化・頻発化する水災害に備えるための河川改修工事などを推進している▼県は、16年台風第10号災害への対応として、岩泉町内の小本川の河川改修を進めており、事業の終盤に入っている。24年8月の台風第5号の際には、河川改修が進ちょくしていたことにより、同町の赤鹿水位観測所で25㌢の水位低減効果が見られた。住宅の浸水被害はなく、大きな治水効果が発揮された整備事例の一つだ▼今後も、人々の思い出につながる河川の環境を大切にしながら、同時に各地域の治水対策も進めてほしい。
●つむじ風 7月9日
 県建設業協会北上支部青年部会は、県立黒沢尻工業高等学校土木科3年生を対象に測量実技講習会を実施している。今回で24回目となる伝統的な行事となっている▼「基準点からの位置出しとトンボの設置」「路線の横断測量と丁張りの設置」を2週にわたり学ぶことも長年続いている。菊池栄幸部会長は、「測量機器は日々進歩しているが、測量の基本は変わらない。講習会を通して基礎を学び、社会に出て応用に変えられるようになってほしい」と生徒らの成長を願っている▼彼、彼女らが来年4月1日に入社すると、1年後のきょう7月9日は入社100日目を迎えることになる。AIに入社100日間の過ごし方を問うと「積極的に質問する」「メモを取る習慣をつける」「報連相を徹底する」「自己成長を意識する」との回答が導き出された▼自らのことが頭に浮かび1万日を調べてみると、キーワードは「感謝」「健康」だった。改めて社会人としての基本・基礎を意識しながら、それらを応用に変えることができるように自分自身も成長を続けていきたい。
●つむじ風 7月8日
 先月末に大船渡市内で開かれた建設業労働災害防止気仙地区大会。安全講話では大船渡労働基準監督署の西村浩二署長が、熱中症とともに蜂刺され対策について説明し、注意を促していた▼西村署長は、昨年県内で発生した蜂毒によるアナフィラキシーショックでの死亡事例を紹介した。「屋外で草刈り作業をしていたところ、スズメバチに左腕を刺され3時間後に亡くなった」と語り、「蜂に刺された場合に、重篤な症状が出るか否かは、その人が持つ蜂毒アレルギーの体質次第」と指摘した▼さらに「体質によっては蜂に刺された後、血圧が急低下し15分後には心臓が停止してしまうケースもある」と説明。「大切なのは、自分自身が蜂毒アレルギーで重症化する体質なのかどうか把握しておくこと」とし、事前の血液検査など必要な対策を講じておくよう呼び掛けていた▼山中での砂防工事や道路脇での除草作業など、山林に近い場所での仕事も建設業者には多い。熱中症はもちろん、蜂や蛇、熊によるトラブルを避ける対策にも、目を向けておきたい。
●つむじ風 7月7日
 工事現場に設置される看板は、工事中を周知することに留まらず、公共事業や建設業界をPRするツールとしても活用できるものとなる。昨今は、働き方改革への取り組み、特にも週休二日に取り組んでいる現場であることを強調する看板が多くなった印象がある▼19年度から取り組まれている、行政機関と建設業界団体が協働で公共工事を一斉に休みにして閉所する「週休二日制普及促進DAY」は毎年度、週休二日の実施日数を着実に増やしてきた。今年度は、毎週土曜日の一斉土曜閉所の定着に向けて取り組みを進めている▼これからを担う高校生たちは、就職先を選ぶ上で休日日数を重視している傾向にあるとされる。一方、弊紙が以前、高校生を対象に実施した調査では建設業が休日の少ない職業とイメージする割合が高かった▼業界では、工事看板に加え、ポスターなども制作して、毎週土曜日の閉所を周知している。週休二日に取り組む企業、現場が着実に増えている中、高校生などの担い手をはじめ、広く一般に、どの程度認知されてきているのだろうか。
●つむじ風 7月4日
 先ごろ公表された7月以降分の県営建設工事の発注見通しは369件で、前年度を17件下回った。概算額ベースごとの内訳を見ると、比較的規模の大きい工事は前年度を上回っているが、2500万円未満は34件減となるなど、小規模工事の減少が目立つ▼年度当初に公表される県営建設工の発注見通し件数は、24、25年度と2年続けて500件台後半。06年に策定された「建設業対策中期戦略プラン」を思い出した人もいるだろう。ここでは10年度の県内企業への発注金額を約300億円、発注件数を約800件になると試算していた。当時の金額や件数がどの程度精緻に積み上げられた数字だったのかは分からないが、ここ数年の発注件数が当時の推計を下回っていることは事実▼7月以降の発注見通しに上がっている土木C級の工事は60件。当然、地区ごとの偏りも見られる。発注件数ありきでないことは重々承知だが、これは余りにも少な過ぎ。幸い当時とは、建設業の社会的な位置付けが異なる。国土強靱化実施中期計画の生かし方次第で打つ手はありそうだが。
●つむじ風 7月3日
 25年度の建設業地域懇談会は、7月中の開催が予定されている。地域懇談会は、県や県建設業協会、県電業協会、県空調衛生工事業協会などの地区代表者らが意見を交わす場。9日の久慈地区を皮切りに、県内13地区で開かれる▼例年の地域懇談会では、いわて建設業振興中期プラン2023などに基づき、働き方改革、生産性の向上、担い手の確保・育成など、建設業を取り巻く課題を洗い出している。これほど広大な岩手では、地域の事情もさまざま。担い手の確保・育成の一つをとってみても、工業高校の有無や学校の統廃合など、地域が置かれている状況は異なる▼地区によっては、豚熱、鳥インフルエンザの防疫対応などをテーマに、現場からの生の声が上がることもあるかもしれない。国土強靱化を推進していく中にあっては、土木、建築、電気、管など、各工種の視点に立った提案もあるだろう▼受発注者の立場の違いはあれど、「県土をより良くしたい」という思いは同じはず。建設業を共に盛り上げていくため、多くの課題を克服するきっかけとしたい。
●つむじ風 7月2日
 全国各地の道路異状の通報がLINEアプリから可能になって1年3カ月。災害発生時の道路被災情報をLINEを活用したアプリで収集し、その情報を全国の道路管理者(国、都道府県、政令市)がウェブ上で共有可能なシステムが、6月30日から試行運用を開始した▼今回のシステムは、道路緊急ダイヤル(#9910LINE版)システムを応用。今年1月から、関東地域で試験運用を始め、関東地方整備局と東京都では訓練を実施。LINEで報告された被災情報をデジタル地図上でリアルタイム共有するなど検証を進めていた▼14年前。東日本大震災直後、被災地のインフラは壊滅状態で、通信手段も大打撃を受けた。電話がつながらず、メールが届かない状況で、電話回線を使わないメッセージアプリを作ろうという思いから開発を進め、誕生したのがLINEだった▼近年、激甚化・頻発化する災害。災害発生初期の状況把握の重要性は言うまでもない。速やかな道路啓開や復旧計画の立案などに役立てるためにも、市町村レベルで活用できるようにしたい。
●つむじ風 7月1日
 県が住田町内を流れる気仙川で、架け替え事業を進めている昭和橋。同町世田米の現地では下部工が5月に完了。現在は上部工に入っており、今後、桁の製作が本格化していく▼事業は、旧橋の橋脚の間隔が狭く、川底から橋桁までの高さも不足していたため、増水時に流木などが川の流れを妨げ、浸水被害を及ぼす恐れがあることから計画された。新橋も旧橋と同じ場所に整備しており、規模は橋長が72㍍、全体幅員は7・8㍍。「1車線+2歩道」の幅員構成により、2径間連続プレビーム合成桁橋で整備される▼上部工は26年7月までの工期で進めており、今後は製作が本格化していく模様。現場での架設工事は今のところ、年内にも始まる見込みだ。上部工完成後は、取り付け道路などの整備を図り、新橋は26年度内の完成を目指すとしている▼旧橋は、住田を代表する町並みや蔵が続く景観とともに、長く町民に親しまれていた。新たな橋も町のシンボルとして、町役場などと町中心部をつなぐ重要路線となるだけに、着実な整備の進捗が求められるだろう。
●つむじ風 6月30日
 6月は、多くの建設企業で安全大会が開かれる時期。弊紙でも多くの企業から声をかけていただいている。安全大会では、墜落・転落、重機、崩壊・倒壊の3大災害と同等か、それ以上に熱中症対策に関することが近年、多く呼び掛けられている印象がある▼一昔前の岩手の6月は、梅雨寒などとも表現されるように、朝方などを中心に、日によっては少し暖房を付けたくなるような日もあったものだが、昨今は夏本番を思わせるような高温多湿の日が多い。熱中症対策は5月から必要な状況となっている▼現場などを見ても、熱中症対策を重視している様子が見受けられる。空調服一つをとっても、ここ数年で一気に普及し、施工現場のみならず、商用店舗などで駐車場の誘導員らもほぼ着用しているくらい見受けられる。作業員の熱中症リスクを判定するAIを搭載したカメラやウォッチ、循環型クーラーを利用したテントなども出てきている▼6月から、職場での熱中症対策が義務化されている。さまざまな対策を講じながら、猛暑を乗り切っていきたい。
●つむじ風 6月27日
 建築家の方と話しているとき、「モダニズム建築」という言葉が出てくることがある。多くは「合理的・機能的だが面白みがない」という文脈で。19世紀末から20世紀初頭は、鉄骨や鉄筋コンクリートなどの新建材というハードと、近代化の中での合理性重視というソフトが合致した時代だったのだろう▼坂牛卓『教養としての建築入門』(中央公論新社、2023年)の中で著者は、オーストリアの建築史家エミール・カウフマンの著書を引用する形で、モダニズム建築は前時代の装飾的な建築にあった外部からの意味付けを排除した、意味を補強されない「自律的な」建築であると定義する。同著を読むと、少し後にはファシズム国家によるプロパガンダ建築やポストモダンなども出てくるが、これ以上突っ込んだ話はぼろが出るのでここまで▼本県における合理的・機能的な直線のモダニズム建築といえば、時代は下がるが県庁舎と盛岡市庁舎か。そういえば両施設とも再整備や新庁舎整備が議論されている。建築物としての意味と在り方にも注目していきたい。
●つむじ風 6月26日
 先日、白杖をお持ちの男性の方と話をする機会があった。その方は、自販機から聞こえる音などを頼りに自分が歩いている場所を把握しているそうで、家まで向かっているとのことだった▼筆者は近所に住んでいることもあり、これまでも何度か、その方と会話をしたことがある。「ここの道が広くなった。歩道にも新しく点字ブロックが整備されて、とても歩きやすくなった」と喜んでいたことが印象深い▼地域に密着し、住民が必要とするインフラの整備に携わることができるのも、地元建設業の仕事のやりがい。大規模なプロジェクトに基づく工事ではなくとも、インフラの整備によって地域にもたらされる事業の効果は数多くある▼住みよい地域づくりのためにも、地域住民や地元建設業が持っている視点、「ちょっとした気付き」などが重要になりそうだ。身の回りにも、インフラの効果を最大化できるような整備の可能性が眠っているのではないか。何気ない日常会話の中にも、将来につながる地域づくりのヒントが隠されているように感じている。
●つむじ風 6月25日
 気象庁は20日、線状降水帯予測精度向上ワーキンググループの第10回会合を開催。観測・予測の強化やメカニズム解明研究の着実な推進、新しい観測機器を導入した集中観測等をより一層推進していくことなどを確認した▼観測体制に関しては、21年度から洋上の水蒸気を捉えるための全球測位システム(GNSS)観測装置を設置した観測を開始。24年度に北陸や東北での線状降水帯発生を踏まえ、25年度は機動的な水蒸気観測を日本海側にも拡充予定だ▼そもそも、線状降水帯にはいまだに分からない部分が多い。そのため、大学や研究機関と連携し、25年度は緊急研究を実施して観測を強化。機構解明を加速させる。観測データや知見を用いた数値予報の精度向上につながるような研究も実施する▼昨年8月に本県内陸で発生した線状降水帯による前例のない降雨のため、道路や橋梁、農地などに被害が生じたことは記憶に新しい。線状降水帯を想定した訓練が行われているが、メカニズムが分かれば対応に確実性や柔軟性が増すだけに、一日も早い機構解明が待たれる。
●つむじ風 6月24日
 厳しい暑さが続く中、各地で開かれる現場パトロールや企業の安全大会では、熱中症への対応が呼び掛けられている。夏季の労働災害ゼロに向け、暑さ対策を徹底していきたい▼今月1日から職場での熱中症対策を強化するため、改正労働安全衛生規則が施行されている。「WBGT値(暑さ指数)28度以上または気温31度以上の環境下で、連続1時間以上または1日4時間を超えての実施」が見込まれる作業を対象に、症状の重篤化を防ぐため、「体制整備」、「手順作成」、「関係者への周知」が事業者に義務付けられた▼対処には、熱中症のおそれがある労働者を早期に見つけることが重要になる。熱中症が疑われる症状例としては、ふらつきや生あくび、失神、大量の発汗が見られるほか、自覚症状としてめまいや筋肉痛、こむら返り、頭痛なども挙げられている▼初期症状を見過ごし、放置して対応が遅れることのないよう、症状の情報共有はもちろん、一人体制ではなくバディを組んでおくことや、応急処置の手順の周知など、万が一に備えていきたい。
●つむじ風 6月23日
 平泉町の国道4号と一関市舞川の主要地方道一関大東線を結ぶ一般県道相川平泉線は、平泉と大東方面を短絡する県道。平泉町など地元では、東北道の平泉スマートICとILC(国際リニアコライダー)の建設予定地となっている一関市大東町を結ぶ最短路線として、見通しの悪い急カーブや狭小区間の改良を求めている▼路線は、平泉町内の国道4号から沿岸部へアクセスする意味合いでも、重要な道路。広域観光ルートとしての位置付けも大きく、沿道には、メディアなどでもたびたび取り上げられる「みちのくあじさい園」が位置する▼観光資源を生かして、県建設業協会一関支部(宇部和彦支部長)では、相川平泉線にアジサイを04年度に植栽した。毎年メンテナンスしており、今年も20日に周囲の草刈りなどを行い、アジサイの順調な生育を願った▼「みちのくあじさい園」は今年度、25日からオープン予定。地元業界の長年の活動が相乗効果となり、多くの観光客らでにぎわうことが願われる。地道な活動が、さまざまな面に波及していくことも望まれる。
●つむじ風 6月20日
 県の建設関連業務では4月から、簡易総合評価落札方式の対象金額を1000万円以上に引き上げるとともに、簡易な業務は設計金額に関わらず価格競争とするなどの見直しを行っている▼従来の建設関連業務は簡易総合評価落札方式のウエートが大きく、企業の技術力を評価する調達方式ではあるものの、受注の偏在を生じさせるという課題もあった。業界団体からは見直しを求める声も多く、今回の変更に至った▼建設産業の最上流部に当たる建設関連業が健全に維持されてこそ、現場での質の高い施工が可能となる。つまり建設関連業務の入札制度を見直すことは、建設生産システム全体の改善にもつながる。この点は県建設業協会も各方面で指摘しているとおりだ▼県建設関連業団体連合会は、同一開札日に同一公所から発注される同種業務における先抜け方式や一括審査方式の導入、チャレンジ型入札制度の創設、企業の地域内拠点の見直しなども要望している。県民福祉の向上と県土の防災力強化の観点からも、必要な見直しは速やかに取り組んでほしい。
●つむじ風 6月19日
 「岩手のインフラ整備は道半ば―」。さまざまな意見交換会や要望会などの場で、よく耳にする言葉だ。建設業界のみならず、市町村の首長からも声が上がることが多い▼広大な県土を誇る本県においては、インフラが社会生活を支えている。内陸部と沿岸部を結ぶ道路は、地域を支えるインフラの最たる例と言える。県土の存続のためにも、確実に機能を発揮する道路などのインフラが必要だ▼東北建設業協会連合会(千葉嘉春会長)の25年度通常総会では、東北地方整備局の西村拓局長が「東北地方の社会資本整備について」と題して基調講演した。西村局長は、国土強靱化などの重要性を語り、高規格道路のミッシングリンクの解消をはじめ、高規格道路と直轄国道のダブルネットワーク機能の強化、津波対策の要となる湾口防波堤の整備などを進めていく考えを示した▼県土を強靱化していくための視点は、日常的な社会資本の整備や維持管理などによって培われていくものではないか。強靱化を今後も推進する上では、地域を熟知している人の目が重要になる。
●つむじ風 6月18日
 最新の建設技術を公開するEE東北25が4、5日の2日間、仙台市内で開かれた。東北建設業協会連合会とVR推進協議会の協力で重機シミュレーター体験会も企画され、実際に体験してきた▼その中で、除雪シミュレーターでは、ソフトで道路構造や標識などを再現したデジタルツイン環境を構築。除雪車両のコックピットを3Dモデルで再現し、リアルな運転環境でステアリングやアクセルなどを操作体験することができた▼体験では、札幌市中心部を左右折をして数百㍍先のゴールを目指すもの。ゴーグルを装着すると積雪状態の街が現れ、ハンドルやレバー、ボタンなどが除雪車両用に再現された。順調だったのは「操作はほとんど普通の車と同じです」というスタッフの話しまでだった▼高齢化や人口減による人材不足の課題解決に向け取り組みが始動している。雪に覆われた道路や道路構造物なども可視化できれば…。実際に体験してみての感想だ。高度な運転技能が求められるが、技能取得機会が少ない除雪車両のオペレーター訓練の大切さも感じる瞬間だった。
●つむじ風 6月17日
 大槌町が整備を進めてきた東日本大震災の追悼施設「鎮魂の森あえーる」。施設は今月末にも完成する見込みとなり、8月5日には記念式典が行われる▼事業は町全体の「追悼・鎮魂」の場として、「被害と教訓」、「復興への想いと感謝」、「希望」を次世代に伝え続けていくことができる施設を整備するもの。建設場所は同町須賀町。町中心部を守る大槌川水門の周辺で、敷地面積約1・45㌶内に芳名碑や献花台、芝生広場などを設置する。施設は23年7月に起工式を実施し、工事が進められてきた▼平野公三町長は記者会見で、記念式典の開催に向け「震災から14年が経つ中、完成に至ることをうれしく思う」と語るとともに、「末永く愛される施設になってほしい」と、町民に親しまれる場となることを願っていた▼8月15日には大槌漁港内の海づくり記念公園で、震災で犠牲になった町民1286人と同数の花火も打ち上げられる。「鎮魂の森」が、東日本大震災から復興への思いを後世へ継承しつつ、訪れる人に命を守る行動を改めて認識させる場になればと思う。
●つむじ風 6月16日
 14日で08年に発生した岩手・宮城内陸地震から17年となった。08年当時の発生時刻8時43分は一関市内で建設業者の環境美化活動に関して取材中だったが、発生したときの状況、翌日には県建設業協会一関支部が被災状況をパトロールする状況や崩落が発生した箇所の土砂撤去作業する様子を、役員に付いて取材したことは今でも忘れない▼同支部では、毎年発生日の辺りに災害情報伝達訓練を実施。今年も、同支部が構築した災害情報共有システム(ASP)やデジタル無線機を活用して、被災箇所や状況を報告したほか、今年度は近年、建設業者で導入が進展している遠隔臨場を活用した被災状況の報告も試した▼同支部では、訓練結果を検証し、さらに体制を充実させていく構え。多発する自然災害に対して、地元建設業者にかかる期待は大きく、体制の充実は頼もしさを感じる▼奇しくも、今年の14日は08年と同じ土曜日。改めて、防災に対する備えの大切さを認識するとともに、防災対策として国土強靱化の推進の必要性を建設専門誌として訴えていきたい。
●つむじ風 6月13日
 今年に入ってから、建設業における労働災害が前年を上回って推移している。事故の型別では、3月、4月と連続して「墜落・転落」と「転倒」が同数。例年だと4月の段階では「墜落・転落」が最も多く、厳冬の年には「転倒」がそれに迫る勢いになるパターンが多いのだが、前年との比較では「転倒」が6人増、「墜落・転落」が1人減▼全産業で見た場合、「転倒」が160人で最も多い。次が「墜落・転落」の66人と、転倒の極端な多さが見て取れる。ちなみに「転倒」「墜落・転落」のどちらも前年比増。岩手労働局では「労災全体の約4割を転倒災害が占め、墜落・転落災害が増加傾向にある」として、全国安全週間の準備期間である6月における対策強化を図る考えを示している▼そういえば6月は「STOP!転倒災害プロジェクト」の重点取り組み期間だったはず。検索すると、転倒災害防止対策のポイントやチェックシートが出てくる。特にもチェックシートは基本的な9項目を押さえており、自社の現状確認と速やかな改善に役立ちそうだ。
●つむじ風 6月12日
 福岡市内の道路が陥没―。さまざまなニュースや、SNS上の話題として取り上げられていた。埼玉県八潮市で起きた道路陥没事故の記憶がいまだ新しいだけに、日常生活を支えるインフラの重要性に再び注目が集まっていくのではないか▼インフラは基本的な道路のみならず、水道や下水道、電力、通信など多岐にわたる。われわれの安全・快適で豊かな生活を支える共通の財産とも言える▼取材先においては、「インフラは『あって当たり前』ではないのだが…」という言葉をよく耳にする。日々の整備や維持管理、計画的な更新などが行き届かなければ、地域での生活に支障を来してしまう▼11日には、東北建設業協会連合会による25年度通常総会が仙台市で開かれた。総会では国などに対し、公共事業予算の確保などを強く要望することを改めて確認。6県で一致団結し、地域建設業が社会資本を支えていることを関係機関や地域住民らに広く訴え続けたい。国土強靱化実施中期計画に基づく対策が推進されていく中、地域を熟知している建設業界の声は大切になる。
●つむじ風 6月11日
 きょう11日は雑節の一つ「入梅」。今年も集中豪雨や台風などにより河川の氾濫や低い土地での浸水、土砂災害などが発生しやすい時期に入った▼国土交通省は、防災に役立つさまざまな情報をより便利に、より簡単に活用できるようにするため「ハザードマップポータルサイト」を運用している。同サイトは、全国を一つの地図上に重ねて表示できる「重ねるハザードマップ」と、市区町村が公開している各種ハザードマップを検索できる「わがまちハザードマップ」で構成されている▼重ねるハザードマップでは、指定した地点周辺の災害リスク情報や避難行動のポイントがまとめて表示される。わがまちハザードマップでは、リンクする市町村作成のハザードマップと併せて利用することで、最新の情報を確認することができる▼災害から命を守るためには、身の回りでどのような災害リスクがあるのか、どう避難すればよいのかなどを事前に確認し、備えることが重要だろう。本格的な梅雨入りを前に、ハザードポータルサイトで災害リスクなどを確認したい。
●つむじ風 6月10日
 宮古市が同市田老地区の旧田老総合事務所跡地に整備し、6日に開館を迎えた市災害資料伝承館。当日は地域住民や子どもたちが施設を訪れ、ガイドの説明を受けながら同市を襲った自然災害の歴史を学んでいた▼伝承館の規模は鉄骨造平屋建ての、床面積422・62平方㍍。施設では、市に被害をもたらしたあらゆる災害の資料と記録を収集し展示。教訓と記憶を風化させることなく次世代に伝えることで、命を守る行動を促していく▼内部には、東日本大震災で被災した道路看板などの実物のほか、津波や水害、大火、防災まちづくりの歴史をパネルで展示。さらに証言インタビュー映像や、ジオラマなど多様な資料をそろえている。高岩将洋館長は「防災を学ぶ新たな拠点として、市民に親しみを持ってもらえる施設にしたい」と語っていた▼周辺には津波遺構「たろう観光ホテル」や、津波被害を受け整備された田老防潮堤などの震災伝承施設も位置している。こうした施設とも連携しながら災禍の歴史を確実に伝え、防災意識の向上を図ってほしいと思う。
●つむじ風 6月7日
 6月からは衣替えの時期だが、近年の気候などを反映してか、軽装となる時期は一昔前ほど明確でなくなってきている。中学校や高校などでも、生徒の体調面を最優先に考え、6月前でも夏服の着用を認めていると聞く▼先週は前半が平年より気温が低く、肌寒さが感じられた一方、後半になるにつれ気温が高くなり平年を上回るなど、寒暖の差を感じた一週間だった。体調管理、特にも身体がまだ暑さに順応していない時期で、熱中症に注意したい▼一関労働基準監督署などが主唱する「夏季死亡災害ゼロ101日運動」が1日から始まっている。①熱中症を防ごう②墜落災害をなくそう③機械設備による労働災害をなくそう④車両系機械による災害をなくそう―を重点事項に掲げ、9月9日までの期間中の死亡災害ゼロを目標に活動が展開される▼四つの重点事項は、前年と同様だが、今年は熱中症への注意が1番目の重点事項に掲げられており、例年以上に重視している姿勢が感じられる。実際に熱中症の発生件数は、ここ数年右肩上がりのように増えているようだ。
●つむじ風 6月6日
 県生コンクリート工業組合によると、25年度の工組員企業の生コンクリート出荷数量は約45万立方㍍。過去最少を更新する見込みで、震災前10年度の6割弱と聞けば、いかに少ない数字か理解してもらえると思う▼私自身はその時を知らないが、ピーク時の生コン出荷は220~230万立方㍍ほどあったそうだ。05年度に初めて100万立方㍍を下回り、10年度の約77万3000立方㍍を底として震災復興需要に伴い需要が回復。15年度は約193万立方㍍とピーク時に近い水準まで持ち直した。19年度以降は5年連続で前年を下回り、24年度は約53万2000立方㍍と6年ぶりに回復したが、25年度は再び減少することが見込まれている▼今後は北上川上流ダム再生事業、岩手県庁舎の再整備、盛岡市の新市庁舎整備、田鎖蟇目道路や箱石達曽部道路、秋田自動車道など、まとまった生コン需要が見込まれる事業は多い。需要期に必要な生コンが供給されずに困るのは、実は発注者の方では。健全な生コン業界の維持を、民間の市場原理だけに委ねてよいのだろうか。
●つむじ風 6月5日
 県土整備部の公式SNS「岩手県県土整備部~美しい県土づくりNEWS」をご覧になっている読者の方も多いだろう。同部のインフラ整備関連の取り組みやイベント情報など、旬な話題を提供している▼このSNSでは、建設業界のPRにも力を入れている。最近の投稿を見ると、バックオフィスDXを導入している企業の事例や、いわて女性活躍認定企業として認定されている地元企業の取り組みなどの情報を発信。SNSを活用しつつ、地域の建設企業にスポットを当てている▼県や建設業界のさまざまな取り組みを知れば知るほど、いかに建設行政・建設業界が、建設業などの魅力の向上のために努力を重ねているのか―ということに気付かされる▼建設行政・業界という大きな視点から、さらに焦点を絞っていくと、受発注者を問わず「県土のために貢献している人」の存在にたどり着くだろう。将来の県土を担う若者たちに、建設分野の仕事の重要性を少しでも知ってほしい。情報媒体が時代に応じて変わるとしても、根幹にある思いは変わらないはずだ。
●つむじ風 6月4日
 建設事業の新材料や新工法、時代のニーズに対応して開発された新技術を公開する「建設技術公開EE東北」。きょう4日から5日までの2日間、仙台市の夢メッセみやぎで開かれる▼建設分野におけるDXを推進するために不可欠なICT技術など「設計・施工」「維持管理・予防保全」「防止・安全」「その他」―の四つの技術分野に952の建設技術が大集結。本県からは10者が出展を予定。会場では、基調講演や各種技術のプレゼンテーションも行われる▼昨年はアシストスーツ体験会を実施。実際に装着しながら、機能や効果を体感することができた。今回は、西館展示場で東北建設業協会連合会とVR推進協議会の協力で、工事現場で行う重機操作をシミュレーターで体験できる企画展示を開催するという▼「広げよう新技術。つなげよう未来へ」をテーマに、今回で34回目の開催となる。現地に来場できない人向けにライブ配信を実施する。時代のニーズに対応して開発された新技術とともに、従来の技術の進化・融合を体感できる場として楽しみにしている。
●つむじ風 6月3日
 大規模林野火災で甚大な被害を受けた大船渡市内では、県が土砂災害対策を図るため応急工事を展開。出水期の到来を見据え、早期完了に向け作業を進めている▼延焼エリアでは、森林の焼損で山の保水力が低下。森林復旧などにより植生の回復が図られるまでの間、土砂災害の発生リスクの増加が懸念されている。県では土砂災害警戒区域などに指定され、焼損が著しく、災害発生の危険度が高い地区29カ所で、応急工事を計画。渓流部に大型土のうや、袋詰め玉石を設置している▼今回の応急工事について県側は、「住家などを守るというものではなく、あくまで土石流の勢いを弱め、住宅地へ達する時間を遅らせることで、避難する時間を稼ぐことが目的」と強調。地域住民に警戒意識、避難意識を高めるよう呼び掛けている▼工事は、災害協定に基づき県建設業協会が推薦した地元企業が担当。県では梅雨入り前の6月上旬を目指し、全て完了させたい考えだ。急ピッチでの作業となるだろうが、労災ゼロを心掛け、無事故無災害で工事を終えてほしい。
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