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2025年
4月25日(金)
17:38

コラム集

●つむじ風 4月25日
 国道282号佐比内工区を構成する(仮称)佐比内トンネルの貫通式が、八幡平市の現地で執り行われた。工区全体の開通は26年度中を目指しており、北東北の物流や観光の振興、安全で円滑な交通確保、東北縦貫自動車道の代替路としての機能強化が期待される▼佐比内トンネルといえば、昨年10月に地元住民や小学生を対象とした現場見学会で、児童からの質問が絶えなかったことを思い出した。聞くと児童たちは、通学中にも現場の様子を関心を持って見ていたとのこと。見学会に参加していた児童の一人からは、「将来トンネルを掘るための仕事に就くには、どのような勉強が必要か」といった質問も上がっていた▼建設業の知名度向上とイメージアップへの取り組みの中でも、現場見学会は有効なツール。時には地元を離れて、他県の現場を見に行くツアーもある。確かに大規模な建築物や土木構造物は建設業の魅力の一つに違いないが、少々地味でも地元にとって意義深い事業であれば、遠くの大規模事業以上に子どもたちの琴線に触れることもあるのでは。
●つむじ風 4月24日
 県建設産業団体連合会(向井田岳会長)と県建設業協会(同会長)による建設業新規入職者教育。今年度の講習会は21、22日の2日間にわたって行われた。建設企業に入社した若者らが受講し、建設業の基礎を熱心に学んだ▼会場は、県建設会館の6階大会議室。受講生らは少し緊張した面持ちで受け付けを済ませた後、会場に入り、それぞれの席に座った。会場の入り口付近に貼ってあった座席表を見ると、さまざまな会社名を見かけた。多くの若者が地元の建設会社で活躍していくことを考えると、やはりうれしさを感じる▼受講生は2日間のカリキュラムで、県土整備行政や労働安全衛生をはじめ、社会人として必要な知識、建設業会計などを学んだ。向井田会長は「夢を持って働いてほしい」と若者を激励。同協会青年部連絡協議会の下舘康尋副会長は講師の一人として、地域建設業の魅力をPRしていた▼建設業を志して入職した若者たちは、現場での経験を通じて成長を遂げていくことだろう。建設業界を挙げて、岩手を支える人づくりを進めていきたい。
●つむじ風 4月23日
 環境省は、光害や大気汚染、環境保全の重要性について関心を深め、観光や教育などの地域資源としての活用を目指し、18年度から星空観測を推進。このほど、24年度冬に実施したデジタルカメラによる夜空の明るさ調査結果を公表した▼調査方法は、デジタルカメラで天頂付近の星空を撮影。その画像データから等級という単位で夜空の明るさを測定している。等級が大きいほど夜空が暗く、20等級以上は一般的に天の川が見えやすいと考えられている▼今回のデータ投稿数のうち有効データ数は497件。投稿のあった継続観察登録地点の参加者の内訳は、団体が111団体で、個人が59人だった。20等級以上の地点は98地点あり、本県二戸市の古梅児童公園の近辺では、住宅地域ながら20・08等級となっている▼星空を見上げることは、精神的な癒やしや、観察力・集中力が養われ、想像力を刺激するとも言われている。働き方改革、生産性向上、担い手の育成・確保…。待ったなしの対応が求められる中、星空を見上げる時間があってもいいのではないだろうか。
●つむじ風 4月22日
 環境省が主導する脱炭素先行地域は、県内で現在までに5市町が選定され、取り組みが進められている。先行地域のうち、宮古市は17日に復建調査設計㈱と連携協定を締結。脱炭素地域づくりの取り組み強化を図っていく方針だ▼同社は市側へ、エネルギー環境部門に精通した人材も派遣する。派遣期間は5月1日から2年間で、脱炭素地域づくりに係る総合的な調整などに従事する予定。協定締結式で山本正德市長は、「取り組みが一層加速化するものと確信している」と、再生可能エネルギー事業の進展に期待を込めていた▼24年9月に先行地域に選ばれた陸前高田市と釜石市のうち、陸前高田市では事業マネジメント支援事業者に、陸前高田しみんエネルギーを選定。釜石市も事業支援業務の公募型プロポーザルを公告中で、取り組みの本格化に向け準備が進む▼先行地域では太陽光発電の導入をはじめ、地域特性を生かしたプロジェクトが展開されている。再エネの地産地消による持続可能なまちづくりを実現するためにも、事業の着実な推進が求められるだろう。
●つむじ風 4月19日
 わが子の通う小学校から創立記念誌が送られてきた。記念誌には、在校児童の将来の夢がつづられ、男の子はスポーツ選手、女の子はパティシエを夢見る児童が多い印象を受けた▼株式会社クラレが毎年、新小学1年生と保護者を対象に調査している「将来就きたい職業、就かせたい職業」では、男の子の9位が大工・職人と、3年ぶりにトップ10入りした。デジタルネイティブの令和キッズにも、日本人のものづくり志向は受け継がれているようだと分析されていた。保護者が子どもに付かせたい職業では、男の子の保護者で建築家が9位だった▼大工・職人については、かつてトップ5の常連で、2位になった年もあったようだ。さまざま要因はあるのだろうが、建設業を身近に感じ、どんな仕事をしているか、魅力を知ってもらうなどの取り組みは、やはり大切なものだろう▼建設業ふれあい事業をはじめ、子どもたちが重機体験するイベントを取材する機会が多い。取材していて感じるのは、建設業について知ってもらえたならば、魅力を感じる子が男女問わず多い。
●つむじ風 4月18日
 16日に盛岡市で桜の開花が発表された。平年より2日早く、前年よりは4日遅いとのこと。県内の桜の名所は20日前後に満開を迎えるところが多そうだとか。週間予報を見ると、県内では週末から来週にかけて最高気温が20度を超える日も増えてくるようだ▼今年も5月1日から「STOP!熱中症クールワークキャンペーン」が始まる。9月までの5カ月間、暑さ指数(WBGT)の把握と評価を行った上で、休憩場所の準備、作業時間の短縮、プレクーリングなどの対策の徹底が求められている▼4月は準備期間。熱中症予防管理者の選任など「労働衛生管理体制の確立」、暑さ指数に応じた休憩時間の確保や作業中止に関する事項を含めた「作業計画の策定」のほか、休憩場所や服装などの検討、緊急時における対応の事前確認などに取り組むこととしている▼「4月が準備期間とは随分と気が早いなぁ」と思っていたが、暑熱順化ができていない春から初夏にかけての熱中症も少なくないと聞く。長期予報では今夏も全国的に猛暑。準備期間から適切に取り組みたい。
●つむじ風 4月17日
 県土整備部建設技術振興課は、24年度の優良県営建設工事表彰を受賞した工事の概要や現場での取り組み事例、技術的な工夫などを広く知ってもらおうと、受賞工事の概要をまとめた資料を県ホームページで公表している▼資料には現場の写真とともに、受注者名や表彰区分、等級、工事概要などを記載。それぞれの工事において特に優れている点や、他の模範となる創意工夫、地域への配慮事項などをまとめている▼地域とのコミュニケーションを重視しながら綿密な工程調整に努め、新技術を多数活用して品質の高い工事を無事故で完工させた現場。高校生らの就業体験や現場見学会を積極的に受け入れてきた取り組み事例もある▼地域の建設業が、担い手の確保や公共事業の理解促進につながるような取り組みに力を入れながら、いかにして課題を克服し、県土づくりに貢献しているのか―。地域のことを思い、現場で汗を流している多くの人たちがいる。今年度もさまざまな工事が展開されることだろう。一般の皆さんに、地域建設業の意義を感じ取ってほしい。
●つむじ風 4月16日
 21世紀の下水道のコンセプト「循環のみち下水道」。08年度に循環のみち下水道賞が創設され、18回目となる循環のみち下水道賞の募集が14日から始まった。応募は5月30日まで▼募集するのは、イノベーション、防災・減災、アセットマネジメント、広報・教育と、今回から新たに上下水道一体が加わり5部門となった。上下水道一体では、上下水道一体で効率化・基盤強化などを行うことにより下水道の相乗効果を発揮した取り組みを求めている▼同省ホームページでは、24年度の受賞団体や応募事例を掲載。その中で、広報・教育部門で盛岡市上下水道局の『「伝わって納得」広報戦略方針の策定と対面型広報の実践』の取り組みが記されている。広報戦略方針を「伝える広報」から「伝わる広報」に転換して取り組んだ事例を紹介している▼現場における創意工夫や新技術の活用、災害対策におけるソフト・ハード面の取り組みなど、過去の事例は今後の参考になるだろう。初募集となる上下水道一体部門では、どのような取り組みが展開されているのか注目したい。
●つむじ風 4月15日
 7日に大規模林野火災で鎮火を宣言した大船渡市。2月26日に同市赤崎町字合足で発生して以来、懸命な消火活動が続けられ、ようやくの終息となった。11日からは損壊した被災家屋などを解体、撤去する「公費解体」の申請受け付けも開始。復旧・復興に向けた取り組みが進められていく▼焼失面積は同市の面積の9%に当たる約2900㌶で、平成以降、国内最大規模。今後の調査などで変わる可能性はあるが3月31日時点で、建物被害は計221棟で確認され、被害を受けた住家86棟のうち、全壊は54棟に上っている。11日時点でいまだ200人近い市民が避難生活を強いられている▼現場では、全国から派遣された緊急消防援助隊の応援を受け消火活動が展開された。南三陸沿岸国道事務所からは三陸沿岸道路が援助隊の移動に活用され、救援活動を支えたことが報告されている▼今回の経験を災害対応力の強化に生かしていくためにも、既存インフラの有用性や、整備・改良が必要となるインフラの有無などについて検討していく取り組みも必要だろう。
●つむじ風 4月14日
 4月に入って、朝の通勤時などの時間帯に、黄色い帽子を被った小学生が集団で歩いている場面を多く見かける。小学校生活に慣れるまでの間、集団登校している新小学1年生。近い年代の子を持つ身として、その光景にはほほ笑ましい気持ちになるとともに、一層気を引き締めてハンドルを握る▼登下校中の子どもたちが事故に巻き込まれる事例は、たびたび発生している。そんな痛ましい事故が発生するたびに、心が締め付けられる思いがする▼通学路では、地元や学校、警察、道路管理者らが危険箇所などを幾度も点検し、さまざまな措置が講じられてきている。危険箇所は減ってきているのだろうが、子どもを持つ身としては、事故の撲滅に向けた施設整備などを望む▼今週末、わが子の通う小学校は授業参観だが、保護者らと一緒に登校するよう学校から呼び掛けられている。どんな通学路を毎日歩いているか、通行する際に危ない箇所がないかを確認することなどが趣旨のようだ。わが子ら児童の安全を確保すべく、しっかり確認し合いながら歩きたいと思う。
●つむじ風 4月11日
 八幡平市にある「㈱はちまんたいジオパワー」は、全国で初となる地熱発電所由来の電源をメインとする地域新電力会社。2月から操業を開始し、市内の全公共施設を対象に電力を供給している。電力供給に非化石証書を付けてカーボンオフセットを図る「八幡平地熱ゼロエミプラン」により、CO2排出量は22年度実績から約30%の削減となる見通し▼市内にある民間事業所でも、20施設以上がジオパワーからの供給を受けている。市では、市役所が率先して再生可能エネルギー由来の電気を調達することを通じて、市内民間施設への拡大を図り、市全体のCO2排出削減を進めていきたいとしている▼市は、地熱由来の電力に関心が高い企業の市内誘致を進める考えも示す。24年度に続き、新たな工業用地の選定に向けて具体的な場所や面積、造成の可否などについても検討する見通しだ▼製品のサプライチェーン全体でカーボンニュートラルを目指す動きも広がっている。地方における再生可能エネルギーの地産地消も、十分なブランドになり得るのではないだろうか。
●つむじ風 4月10日
 「多方面から岩手の建設業をPRしたい」。県土整備部県土整備企画室は、パンフレットやパネル展、SNSなどを通じて、県土整備行政の旬の話題や建設業の魅力などをPRしている。いわての建設業魅力紹介パンフレットなど、さまざまな媒体を駆使して情報を発信している▼同パンフレットでは、1月に県内で発生した鳥インフルエンザの対応などを新たに掲載。地域の建設業が県民の安全・安心を守り、快適で豊かな生活を支えていることなどをPRしている▼同部の公式SNSでは、県内各地のトピックスや建設業界の取り組みなどを紹介。県が県政150周年記念で公開している岩手の歴史トピックスの「デジタルアーカイブ」とも連動し、本県のインフラ整備の歩みもSNSを活用して伝えている▼同室の職員は「建設業が面白いと思ってもらえるきっかけとなれば」と語る。住みよい岩手をつくり、支え、次代につなぐ―。建設行政・業界とも、思いは同じ。パンフレットにも大きく記されている。「世界でいちばん幸せな県を一緒に造っていきませんか」
●つむじ風 4月9日
 国土交通省は1日、空き地の適正管理や利活用の指針となるよう、初のガイドラインを策定。特徴に、空き地の現状や空き地の適正管理と利活用に関する取り組み、空き地に関する条例、活用可能な各種制度等―を挙げている▼空き地の現状として、土地基本調査によると、世帯の保有する空き地の面積は、平成20年から30年にかけて、632平方㌔から1364平方㌔と2倍以上に増えた。空き地等の所有者は、およそ6割が65歳以上の高齢者世帯。今後、予想される人口推移を踏まえると、空き地の一層の増加が見込まれる▼具体的な事例を見ると、青森市では雪寄せ場に活用している。貸付した土地の翌年度固定資産税は3分の1を限度に減免。24年度実績で341カ所という。このほか、交流スペースや移住・滞在施設、防災広場などに活用している例が挙げられている▼ふるさと納税の返礼品として空き地の管理サービスを提供する事例も見られた。空き家のみならず空き地に関しても、活用することが地域の未来を切り開く鍵につながるのではないだろうか。
●つむじ風 4月8日
 先月下旬に開かれた三陸沿岸道路等利活用懇談会では、みちのくトレイルクラブの相澤久美事務局長が「みちのく潮風トレイルの現在」と題し講演。意義や効果などについて説明した▼同トレイルは、青森県八戸市から福島県相馬市までの太平洋沿岸をつなぐロングトレイル。2019年に4県をまたぐ延長1000㌔超の長距離自然歩道として全線開通し、沿岸の美しい風景や震災復興が進むまちの姿などを国内外に発信している▼講演ではトレイルの活用によって健康増進はもとより、地域住民とハイカーが出会うことで交流人口・関係人口が増加し、地域の魅力を再認識し合う効果への期待が語られた。課題としては、誘客に向けたPRや、安全な歩行を支える環境整備の充実などを挙げていた▼みちのく潮風トレイル憲章の中では、「歩くことを愛する全ての人々を歓迎し、皆で育てる道とする」ことも掲げている。トレイルを通じ、震災の記憶や沿岸ならではの魅力を広く知ってもらうためにも、関係機関で連携を図りながらハイカーを支えていく必要があるだろう。
●つむじ風 4月7日
 25年度の県内自治体の一般会計当初予算を見ると、比較的増額となっている印象を受ける。投資的経費に関しては、積極的に多くの事業を盛り込んだ自治体もあれば、減額となった自治体もあるなどまちまち。総額が増額となった要因には、物価高騰への対応が大きいようだ▼普通建設事業費に関して、物価高騰へ対応した事業費を確保したとする自治体が見られる。そういった場合、実際の事業量ベースでの増減が注視される▼ロットの大きな事業の有無は投資的経費に大きく影響し、事業が一段落すれば、普通建設事業費が大きく落ち込むケースが目立つ。年度ごとの増減もだが、建設業界が真に望むのは、一定量の事業費についての安定的な確保。担い手確保などの重要性を感じつつも、事業量の先行きが見通せなければ、目先のことで目いっぱいというのが現実な面もあるだろう▼業界団体から行政への要望を取材している際、業界側からはこんな声が増えてきているのを感じる。「全然仕事がない。いろいろと要望しているが、何よりも一番は仕事が欲しい」
●つむじ風 4月4日
 古い話で恐縮だが、06~07年度には本県を含め全国で競うように入札制度改革が進められていた。当時の県内某行政機関における入札業務の責任者の一言。「誰がやっても同じだから参加者は多い方が良いし、落札率は低いほど良い」。冗談で言っているとお思いでしょうが、本人はいたって真顔。記憶力は良い方ではないが、その得意げな顔はよく覚えている▼県の総合評価落札方式は06年度のスタート。急進的な入札制度改革の中、価格と品質がともに優れた企業の受注につながるものと業界からの期待を受け、実際に第1号は技術点による逆転落札だった。それから20年近く経過し、総合評価による受注の偏在という新たな課題が業界を悩ませている▼今年度からは、実績による評価を緩和する「チャレンジ型」がスタート。施工実績が無いことで受注機会を失うなどの不利が避けられるか注目される。「誰がやっても同じ」は困るが「同じ人しかできない」も困った話。自分たちが発注する工事を誰に受注してほしいのか、そこを明確にするのも一つの発注者責任。
●つむじ風 4月3日
 1日に開かれた政府の国土強靱化推進本部では、第1次国土強靱化実施中期計画の素案が示された。素案は、内閣官房国土強靱化推進室のホームページでも公開されている▼素案を見ると、計画期間は26年度から30年度までの5年間。事業規模は「今後5年間でおおむね20兆円強程度を目途とし、今後の資材価格・人件費高騰等の影響については予算編成過程で適切に反映する」としている。主要施策に関しては、「防災インフラの整備・管理」「ライフラインの強靱化」「デジタル等新技術の活用」「官民連携強化」「地域防災力の強化」の視点で整理している▼県建設業協会(向井田岳会長)は25年度を重要な年度と捉え、社会インフラ予算の確保と国土強靱化の計画的な推進などのため、関係機関に積極的な要望活動を展開する方針を示している▼県内の建設業は、東日本大震災や16年台風10号など、行政と連携しながら各種対応に当たってきた。強靱化を強力に推進すべく、技術的知見を持つプロフェッショナルとして、幅広い視点での提案や地域の声を大事にしたい。
●つむじ風 4月2日
 国土交通省は、上下水道施設のメンテナンスの高度化・効率化に向けて、デジタル技術をまとめた「上下水道DX技術カタログ」を策定。同省ウエブサイトに公開した▼サイト内は対象施設と目的、要素技術に分類。目的は点検調査、劣化予測、施設情報の管理・活用、その他に分かれている。要素となる技術は、AI、ドローン、TVカメラ、ビッグデータ解析、ロボットなど▼水道が78技術、下水道は91技術で、下水道管路の「全国特別重点調査」に活用できる技術も掲載。導入自治体からのコメントやコスト、導入実績など利用者が知りたい技術情報も載せている。要素技術のAIでは、以前取材した水道管の老朽度を評価する手法や、工事費・管路延長を考慮し工事区間(グループ)を自動作成する手法が名を連ねていた▼国交省は、今後も定期的にカタログに掲載する技術を追加し、内容を充実していく考え。カタログを活用し、全国の上下水道で今後3年程度でDX技術を標準実装できるよう取り組みを実施していくという。当たり前を支える技術に注目したい。
●つむじ風 4月1日
 インフラそのものを観光対象として巡るインフラツーリズム。迫力ある景観や整備効果などを見て学べる観光として注目される中、三陸沿岸の防災施設も活用してもらい役割を情報発信していこうと、県は県立大学と共同でデジタルコンテンツを作成した▼コンテンツは、津波対策として宮古市内で整備中の閉伊川水門と、岩泉町の洪水対策として22年度に完成した小本川流木捕捉工を対象に制作。完成後の水門の開閉動作や、洪水時に河川で流木を捕捉する様子が、CGによって映像化されている▼水門の映像はAR(拡張現実)技術により、スマートフォンで現場の景色に投影し見ることができる。水門現場には、これまでも多くの見学者が視察に訪れており、今後は作成されたARを体験することで、津波がまちを守るイメージをより実感しやすくなるだろう▼新年度に入り、震災学習や教育旅行を企画・検討する学校などもあるはず。構造物の役割や必要性を分かりやすく伝えるコンテンツが、土木への理解醸成、さらに将来の職業選択にもつながればと思う。
●つむじ風 3月31日
 建設業の魅力に、造ったものが地図に残ることや人のための仕事を実感しやすいことなどが、たびたび挙げられる。建設業の大きな魅力だが、魅力は逆に大変そうと思われる要素にもなり得る▼個々に趣味嗜好は異なり、Z世代などと次代を担う若手について一括りにするのは良くないかもしれないが、傾向を捉えることは担い手確保、建設業で長く働いてもらうために必要なことだろう。明日から新年度となるが、新たに建設業へ入職してくる社員らが定着し、スキルを着実に身に付け、次代を担っていく人員となっていくべく大事に育てていきたい▼新入社員に加えて、異動などで環境が大きく変わる時期ともなる。建設業においては、新入社員や新たに業務に就く社員に対して、最初の段階の時期にこそ、十分な安全衛生教育をして、安全や健康第一を身に付けさせることが大切に思う▼県内では、今年に入って労働災害が多発傾向にある。新年度を無災害で過ごすためにも、安全教育を徹底したい。労働災害は、経験期間の浅い人員に多いことが特徴でもある。
●つむじ風 3月28日
 県は25年度、次期水道ビジョンの策定に着手する。「持続」「安全」「強靱」を三つの柱に現状と課題を分析し、将来目標と実現方策を設定。広域化や老朽化対策、技術の継承などについても議論が進むものとみられる▼滝沢市の水道給水開始から50年を記念した講演会が先ごろ催された。パネルディスカッションでは、同市の水道の未来について意見交換。パネリストの一人から「当たり前という言葉は好きでないが、その当たり前を支える人の存在が伝わっていない」との重い言葉があった▼別のパネリストは「当たり前の反対語は『ありがたい』。これは『有ることが難しい』ということ」と話し、水道施設の必要性に関するコミュニケーションの大切さも説いていた▼本来は「有り難い」ものである水道施設を当たり前に維持していくため、水道に関わる人や技術の持続可能性を、県の次期ビジョンの中でも問い直していく必要がある。そういえばいつの間にか「エッセンシャルワーカー」という言葉も聞かれなくなった。両方の意味で「ありがたい」仕事なのに。
●つむじ風 3月27日
 県土整備部港湾空港課がまとめた久慈港長期構想の素案。長期構想は、同港を取り巻く環境の変化などを踏まえ、おおむね20年から30年先を見据えた将来像を示すものとなっている▼長期構想の基本目標は、「暮らし・エネルギー・地域産業を守り育む県北の拠点港『久慈港』」。構想では「物流・産業」「環境」「賑わい・交流」「安全・安心」の分野で、施策を整理している▼物流・産業分野では、物流のニーズに合ったふ頭の再編や、エネルギー産業拠点の形成などに取り組む。環境分野では、藻場の造成などを推進。賑わい・交流分野では、クルーズ船の受け入れ機能の強化や、新たな静穏海域を活用したレクリエーション機能の充実などを目指す▼安全・安心の分野では、港湾施設の計画的な点検や補修を実施。湾口防波堤や耐震強化岸壁の整備などを進め、広域的な緊急物資ネットワークを形成する▼取り組みの着実な進展に伴い、同港から周辺地域への波及効果も期待されるだろう。県北部のポテンシャルをより引き出すため、今後の取り組みに注目したい。
●つむじ風 3月25日
 山田町では同町船越の産直ひろば「ふれあいパーク山田」(旧道の駅「やまだ」)が、1月末に道の駅「ふなこし」として再登録された。施設は改修工事が進められており、7月の全面リニューアルが予定されている▼改修工事は、建設から23年が経過し老朽化が著しいため、時代のニーズに合った施設に整備するもの。休憩所とトイレの間では現在、情報提供施設やベビールーム、屋上に展望テラスを備える建物(鉄骨造平屋建て、床面積104・68平方㍍)の新築工事が推進中。屋根付き通路なども設置される計画になっている▼町内では23年7月に、三陸沿岸道路・山田インターチェンジ付近で道の駅「やまだ」(愛称記おいすた)が移転・開業。昨年9月には累計の来場者で100万人を達成し、多くの観光客などに利用されている▼今回の登録によって二つの道の駅を有することになった町は、共にゲートウェイとして相乗効果を図り、経済の活性化、交流人口の拡大などにつなげていく方針だ。施設の特色を生かしつつ、山田の魅力を発信してほしいと思う。
●つむじ風 3月24日
 埼玉県八潮市で発生した道路陥没事故を受け、国から自治体に「下水道管路の全国特別重点調査」の実施が要請され、今後調査が進められる。八潮市での事故以降、下水道管路の老朽化が注目されているが、こうした衝撃的な事故を受け注目されるケースは多くある▼インフラ施設では、12年の中央自動車道(上り)笹子トンネルの天井板落下事故を頭に浮かべる読者が、やはり多いだろうか。笹子トンネルの事故は、道路インフラメンテナンスの考え方を大きく変える転機となり、道路構造物の5年に1度の点検が定められた▼下水道管についても、5年に1回以上の点検が義務付けられている。八潮市での事故を契機に、点検などの在り方が大きく改正になることも考えられる▼特にも公共事業に携わる側にとって、さまざまな公共施設の長寿命化対策が叫ばれて久しいものの、なかなか進展しないとの思いでいる人もいるだろう。予期せぬ事故に留まらず、防災面でも国土強靱化などに向けて老朽化対策を欠かすことはできず、年を追うごとに重要性は増していく。
●つむじ風 3月21日
 県建設業協会(向井田岳会長)は、東日本大震災の教訓を踏まえて設定した3月11日「防災の日」に合わせ、広域的な災害を想定した情報伝達訓練を毎年実施している。今年度の訓練も先日行われ、本部・支部の情報連絡体制を強化した▼本部職員らは訓練終了後、個々の反省点などを洗い出した。情報連絡を担当した職員からは「情報を正しく伝えることが難しかった。自分で書き残したメモの内容を本部職員で一度確認した上で、支部に伝えた方がよかったと感じた」「土地勘の有無によって、情報の伝え方も変わる。柔軟な対応が重要」との声が聞かれた▼今後の備えに関しては、「資機材の搬入先をあらかじめリスト化し、候補地をある程度絞っておけば、情報の混乱を防げるのではないか」との提案もあった。向井田会長、菊池満専務理事兼事務局長らは、課題を洗い出し、次につなげていくことの重要性を職員と共有していた▼行政機関では人事異動の時期を迎える。新年度に入ってからも、協会本部・各支部や関係機関との連携の重要性を改めて確認したい。
●つむじ風 3月19日
 北上公共職業安定所が主催する企業研究会&先輩就職者交流会が先日、県立黒沢尻工業高校2年生135人を対象に開かれた。土木科や電気科には、先輩社員らが訪れ、体験談などを通し地域企業や職業に対する理解を深めた様子だった▼交流会は、事業所の担当者による説明や先輩就職者の体験談などを通じて、地域企業や職業に対する理解を一層深め、新規高校卒業予定者の地元就職の促進につなげようと開いている。土木科には、3年前と10年以上前の卒業生が訪れた▼後日、土木科の先生と話す機会があり、先輩社員のことを聞くと、10年以上前でも面影があるとのこと。3年前の卒業生については、「格段にコミュニケーション力が上がり、成長を感じた」と目を細めて話す姿が印象に残っている▼同校は1日に卒業式が行われた。以前、土木科に在籍していた先生から4行ほどの祝電が届いていた。その中に「土木は家族」との言葉があり、深い言葉だなと感じた。卒業生が新たな環境で活躍することを願うとともに、取材することが密かな楽しみとなっている。
●つむじ風 3月18日
 大船渡市赤崎町で発生した山林火災。9日に鎮圧を宣言した市は、14日から公的支援を受けるために必要な罹災証明書の交付を開始した。暮らしの再建に向けた対応は、徐々に次の段階に移りつつある▼13日に現地の県道を車で走ったが、沿道からでも分かるほど広範囲で斜面の山肌が一面薄黒くなっているのが見て取れ、立木は根元が焦げていた。立木が先端まで炭のようになっている区域もあり、山火事のすさまじさを感じさせる光景だった。山沿いでは焼け落ちた家屋も。現場では一部で復旧作業が進められていたほか、被害の状況を調査する関係者の姿も見られた▼他県からも含めいまだ多くの消防車が走っており、三陸町綾里では車両同士が擦れ違いで四苦八苦している場面にも遭遇。火災エリアに入る前には検問もあり、現地では「火」と「人」への警戒が続けられていた▼19日には応急仮設住宅の建設が始まる。整備戸数は40戸で、5月の完成が予定されている。本格的な再建はこれから。被災者に寄り添いながら着実に復興への歩みが進むことを願いたい。
●つむじ風 3月17日
 県の人事異動が14日付で内示になるなど、3月末にかけて異動の時期に入ってくる。異動に伴う引っ越しも繁忙期で、国交省では引っ越し時期の分散に協力を呼び掛けている▼近年、人手不足などで希望日にあう引っ越し事業者が見つからない事態となっているとされる。今シーズンは「物流業界の2024年問題」も相まって、事態の深刻化が懸念される。分散化の実現には課題が山積しているだろうが、少しでも取り組みが進むことが期待される▼短い期間に物事が集中することで、さまざまな障壁が生じる。近年の天候を見ても、水不足になるほど雨が降らなかったかと思えば、過去に経験したことがない程の豪雨となり、災害に見舞われている。今冬も、日本海側を中心に災害級の大雪になった▼1月下旬から2月にかけて、国や県などから多くの工事案件が公告された。債務負担行為の設定などにより年度末の発注が増えた側面もあるもので、閑散期とされる年度当初からの工事着手を可能とするものだが、月ごとにムラのない発注件数となることが、真に求められる。
●つむじ風 3月14日
 大船渡市の林野火災は9日に大船渡市が鎮圧を宣言し、10日には市の全地区で避難指示解除が解除された。本紙12日付1面では県建設業協会大船渡支部の須賀芳也支部長が、地域住民の暮らしの再建に向けた思いを語っている▼故宮城政章氏から、83年の久慈大火に対応した際の話を聞かせてもらったことがある。消防車のバックアップに生コン車で水を運んだこと、海に逃げ込んだ人を会社の船が救助したこと…。最後の一言はしっかり覚えている。「もらったのは表彰状1枚だけ。でも地域住民の命を救うことができた経験こそが、何にも代えられない財産になった」▼県建設業協会の向井田岳会長は以前、本紙の取材に対して、大規模災害に向き合う地域建設業の姿を以下のように表現した。「目の前の風景に呆然としながらも、その場でなすべきことを黙々と遂行する、そのこと自体が建設業の力だ」▼災害時などに地域建設業を動かすものは目の前の損得勘定だけではない。しかしそれにも限界がある。ちなみにここで言う「限界」とは、お金だけではないですよ。
●つむじ風 3月13日
 東日本大震災から14年が過ぎ、もうすぐ新年度の春を迎える。東北や県民の一人として、3月11日を決して忘れることなく、三陸沿岸地域や岩手に目を向けていきたい▼震災後、建設行政や建設業界が総力を結集し、各地の復旧・復興事業に当たってきた。地域の安全な暮らしを一刻も早く確保するため、数々の建設現場が目の前で動き出していったことを今も思い出す。当時、工事現場の安全パトロールの際に、参加者に対し津波避難経路が事前に伝えられるなど、同時並行での取り組みも数多くあった▼行政、民間を問わず、4月には新しい職員や社員が入り、新入社員教育や各種研修の場などが設けられることだろう。もしかしたら、復旧・復興の現場で活躍した人たちの背中を見て、入庁・入職する若者もいるかもしれない▼震災後の課題をどのように克服したのかなども含め、復旧・復興で発揮した技術やノウハウなどを、若い世代に伝える取り組みも大切にしたい。ひいては、それが岩手の教訓の伝承、地域防災力の強化につながっていくと思っている。
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