コラム集
- ●つむじ風 6月7日
- 6月からは衣替えの時期だが、近年の気候などを反映してか、軽装となる時期は一昔前ほど明確でなくなってきている。中学校や高校などでも、生徒の体調面を最優先に考え、6月前でも夏服の着用を認めていると聞く▼先週は前半が平年より気温が低く、肌寒さが感じられた一方、後半になるにつれ気温が高くなり平年を上回るなど、寒暖の差を感じた一週間だった。体調管理、特にも身体がまだ暑さに順応していない時期で、熱中症に注意したい▼一関労働基準監督署などが主唱する「夏季死亡災害ゼロ101日運動」が1日から始まっている。①熱中症を防ごう②墜落災害をなくそう③機械設備による労働災害をなくそう④車両系機械による災害をなくそう―を重点事項に掲げ、9月9日までの期間中の死亡災害ゼロを目標に活動が展開される▼四つの重点事項は、前年と同様だが、今年は熱中症への注意が1番目の重点事項に掲げられており、例年以上に重視している姿勢が感じられる。実際に熱中症の発生件数は、ここ数年右肩上がりのように増えているようだ。
- ●つむじ風 6月6日
- 県生コンクリート工業組合によると、25年度の工組員企業の生コンクリート出荷数量は約45万立方㍍。過去最少を更新する見込みで、震災前10年度の6割弱と聞けば、いかに少ない数字か理解してもらえると思う▼私自身はその時を知らないが、ピーク時の生コン出荷は220~230万立方㍍ほどあったそうだ。05年度に初めて100万立方㍍を下回り、10年度の約77万3000立方㍍を底として震災復興需要に伴い需要が回復。15年度は約193万立方㍍とピーク時に近い水準まで持ち直した。19年度以降は5年連続で前年を下回り、24年度は約53万2000立方㍍と6年ぶりに回復したが、25年度は再び減少することが見込まれている▼今後は北上川上流ダム再生事業、岩手県庁舎の再整備、盛岡市の新市庁舎整備、田鎖蟇目道路や箱石達曽部道路、秋田自動車道など、まとまった生コン需要が見込まれる事業は多い。需要期に必要な生コンが供給されずに困るのは、実は発注者の方では。健全な生コン業界の維持を、民間の市場原理だけに委ねてよいのだろうか。
- ●つむじ風 6月5日
- 県土整備部の公式SNS「岩手県県土整備部~美しい県土づくりNEWS」をご覧になっている読者の方も多いだろう。同部のインフラ整備関連の取り組みやイベント情報など、旬な話題を提供している▼このSNSでは、建設業界のPRにも力を入れている。最近の投稿を見ると、バックオフィスDXを導入している企業の事例や、いわて女性活躍認定企業として認定されている地元企業の取り組みなどの情報を発信。SNSを活用しつつ、地域の建設企業にスポットを当てている▼県や建設業界のさまざまな取り組みを知れば知るほど、いかに建設行政・建設業界が、建設業などの魅力の向上のために努力を重ねているのか―ということに気付かされる▼建設行政・業界という大きな視点から、さらに焦点を絞っていくと、受発注者を問わず「県土のために貢献している人」の存在にたどり着くだろう。将来の県土を担う若者たちに、建設分野の仕事の重要性を少しでも知ってほしい。情報媒体が時代に応じて変わるとしても、根幹にある思いは変わらないはずだ。
- ●つむじ風 6月4日
- 建設事業の新材料や新工法、時代のニーズに対応して開発された新技術を公開する「建設技術公開EE東北」。きょう4日から5日までの2日間、仙台市の夢メッセみやぎで開かれる▼建設分野におけるDXを推進するために不可欠なICT技術など「設計・施工」「維持管理・予防保全」「防止・安全」「その他」―の四つの技術分野に952の建設技術が大集結。本県からは10者が出展を予定。会場では、基調講演や各種技術のプレゼンテーションも行われる▼昨年はアシストスーツ体験会を実施。実際に装着しながら、機能や効果を体感することができた。今回は、西館展示場で東北建設業協会連合会とVR推進協議会の協力で、工事現場で行う重機操作をシミュレーターで体験できる企画展示を開催するという▼「広げよう新技術。つなげよう未来へ」をテーマに、今回で34回目の開催となる。現地に来場できない人向けにライブ配信を実施する。時代のニーズに対応して開発された新技術とともに、従来の技術の進化・融合を体感できる場として楽しみにしている。
- ●つむじ風 6月3日
- 大規模林野火災で甚大な被害を受けた大船渡市内では、県が土砂災害対策を図るため応急工事を展開。出水期の到来を見据え、早期完了に向け作業を進めている▼延焼エリアでは、森林の焼損で山の保水力が低下。森林復旧などにより植生の回復が図られるまでの間、土砂災害の発生リスクの増加が懸念されている。県では土砂災害警戒区域などに指定され、焼損が著しく、災害発生の危険度が高い地区29カ所で、応急工事を計画。渓流部に大型土のうや、袋詰め玉石を設置している▼今回の応急工事について県側は、「住家などを守るというものではなく、あくまで土石流の勢いを弱め、住宅地へ達する時間を遅らせることで、避難する時間を稼ぐことが目的」と強調。地域住民に警戒意識、避難意識を高めるよう呼び掛けている▼工事は、災害協定に基づき県建設業協会が推薦した地元企業が担当。県では梅雨入り前の6月上旬を目指し、全て完了させたい考えだ。急ピッチでの作業となるだろうが、労災ゼロを心掛け、無事故無災害で工事を終えてほしい。
- ●つむじ風 6月2日
- 5月は各業界団体の総会とともに、道路や河川整備の整備促進を求める要望活動などを展開する期成同盟会の総会を取材する機会も多い。構成する自治体からの意見も踏まえながら要望内容を精査し、今後、国や県などへ要望に出向く予定がなされている。事業の促進や実現の一助となることが期待される▼同盟会の総会資料などに目を通すと、整備促進を求める事業の中には、昭和初期から始まり、90年以上もの間にわたって進められているものも見受けられた。歴史とともに時間を要する事業が多くあることを改めて感じさせられる▼時間をかけて進めている事業とともに、長年要望し続けているものの、未だ事業化の目途が立っていないような要望項目も見られる。どういった要望の仕方をすれば道筋が見えるか、試行錯誤しながら活動している団体もあるようだ▼近年の雨の降り方や交通情勢など、時代とともに求められるインフラの在り方は変わる。同盟会としても、初期の目的の達成とともに、時代の要請を捉え、効果的な活動を展開していってほしい。
- ●つむじ風 5月30日
- 今年も7月1日から7日まで「全国安全週間」が実施される。実は毎年、安全週間のスローガンに注目している。今年のスローガンは「多様な仲間と 築く安全 未来の職場」。「多様な仲間」が今どきだろうか▼過去のスローガンで使われているワードを振り返ると、2021年の「持続可能な安全管理」はSDGs、11年の「創ろう元気な日本!」は東日本大震災からの復興、02年の「めざすゴールは危険ゼロ」は日本と韓国で開催されたFIFAワールドカップなど。その時代の雰囲気が分かる▼ちなみにスローガン中に「安全」が登場するのは63回。最初は1931年で、一番新しいのは今年。戦時下である44年だって「決戦一路 安全生産」▼ほかに思いつくところでは「職場」の46回、「みんな」の34回、「設備」の16回、「作業」の13回など。ちなみに「設備」は92年以降は登場していない。思いの外少ないのが「安全文化」と「意識」の各4回。「意識」が最初に出てきたのは2013年で、「安全文化」の00年よりずっと後というのは、ちょっと意外。
- ●つむじ風 5月29日
- 「国道281号のトンネルの記事が、新聞に大きく載っていましたね」。取材先において、遠藤譲一久慈市長にお会いした際にかけられた言葉だ。国道281号は、県北の大動脈と表現されるほど、久慈地域にとって重要な路線となる。今後の道路改良に向けて、地域からの期待の大きさが感じられた▼県では、国道281号案内~戸呂町口工区(同市山形町)において、(仮称)下平トンネル(延長569㍍)の本体築造工事を近く公告する。2025年度から3カ年で、トンネル工事を進める計画だ▼同工区の現道は、幅員が狭く線形が不良で、15年8月3日には交通死亡事故が発生。16年台風第10号の際には、久慈川の水位上昇に起因する道路決壊が発生し、広域的な迂回を余儀なくされた。大雨時に道路冠水被害が発生したこともある。今回の改良事業で課題の解消が図られるだろう▼国道281号の整備を着実に進めていき、将来の(仮称)久慈内陸道路の実現に向けて弾みをつけたい。関係者間で道路ネットワークのビジョンを共有することが大切になる。
- ●つむじ風 5月28日
- 流域全体で治水対策に取り組む「流域治水」を促進するため、流域治水の推進に取り組む企業などを「流域治水オフィシャルサポーター」として認定している国土交通省。このほど147の企業・団体等を認定した▼サポーターは、ウェブサイトやSNSなどへの情報掲載やアナウンス、貯留施設の設置、流域の上下流地域の連携を推進する取り組みの実施などを行っている。本県からは㈱東開技術や㈱吉田測量設計が認定されている▼24年度の取り組み実績を見ると、講演や冊子などを通し流域治水対策の重要性を発信したり、治水施設を補完する新たな役割と期待される田んぼダムを広める取り組みなどを展開。流域治水の要となるダムを広く理解してもらおうと、御朱印(ダム印)を作成。管内の直轄管理ダムなど16ダムを対象にダム印を配布するという取り組み事例も見られた▼気象庁によると昨年の梅雨入りは6月23日ごろで、平年は同月15日ごろという。平時の際から流域治水を意識しながら、あらゆる関係者らが連携し流域治水の取り組みを進めていきたい。
- ●つむじ風 5月27日
- 陸前高田市が震災復旧した県指定有形文化財「旧吉田家住宅主屋」は、23日に開館を迎えた。被災から14年。主屋は多くの関係者の熱意により、震災前の姿を取り戻した▼住宅は、江戸時代に仙台藩領気仙郡24村を治めていた大肝入吉田家が、1802(享和2)年に建てたもの。同市気仙町今泉地区のまちのシンボルとして、大切に保存されていたが、震災で全壊。復旧作業には、津波で流出後に回収された部材をできる限り活用したほか、随所に気仙大工左官の伝統的な技法が盛り込まれている▼開館後は、市民や観光客らがさっそく主屋を訪れ、外観や内部を見学。かやぶき屋根を見上げながら、趣あるたたずまいに「すごい」と声を漏らしていたほか、回収した部材がどこに使われていたかよく分からない中での復旧に、感嘆していた様子だった▼今後は市内の視察ルートとして、周囲にある東日本大震災津波伝承館や、市立博物館などと連携した活用も図られるだろう。主屋の価値を発信し、陸前高田の歴史や文化を生かしたまちづくりにつなげてほしいと思う。
- ●つむじ風 5月26日
- 業界団体の総会シーズンを迎えている。総会時に話題として挙がるのは、「仕事がない」や「人がいない」といった内容が多い印象を受ける。事業量に関しては、「震災前の仕事がなかった時期か、それより少ない感触もある」との声まで聞かれる▼担い手をはじめとする人材は、求人を出しても募集がなかなかない面とともに、先行きが見通せないことで、新たな人材の確保をためらっている側面もある気がする。時間外労働の上限規制なども相まって、各企業とも厳しい経営を迫られていることだろう▼建設業に携わる従業員が減っているのは、総会を取材していても感じる。一昔前に比べ会員が大分減ったことに加え、優良表彰を受ける会員企業の従業員も減っている。表彰の対象となる従業員を探すのに苦労する業界団体も多いようだ▼総会に出席する会員が減り、書面表決や委任状の割合が増えた団体もあるという。所用などで出席が叶わない場合もあるだろうが、厳しい環境下にあって、業界が一枚岩となるべく直接顔を合わせられる機会は大切にしたい。
- ●つむじ風 5月23日
- お米をはじめとする食料費の高騰を背景に、高齢者施設や運動部の寮などで、食事を減らしたり、おかわりを禁止したりするなどの対策を講じているところがあるとか。先日、ラジオで聞いた。「高齢者や若者に満足な食事を提供できない国って本当に大丈夫なの?」と文句の一つも言いたくなる▼政府はコメ価格の高止まり対策として、備蓄米の売り渡しに随意契約を活用することを検討しているようだ。早くも「随意契約」という言葉が一人歩きをしているような気もするが、始まってみれば「思っていたのと違う」とならないよう願うばかりだ▼県では東日本大震災からの復旧工事での入札不調を回避するため、随意契約を採用したことがある。ここでは詳しい内容に触れないが、12年秋からスタートしているので、思いの外早い段階から導入していたことが分かる▼大船渡の林野火災に起因する土砂災害への対策も急がれる。有事の際に重要なことは手続き論ではない。市民の安全な暮らしを確保するためには何が必要か。まず考えるべきことはその一点だろう。
- ●つむじ風 5月22日
- 広い県内を往来していると、地域を結ぶ橋梁の多さに気付かされる。地域の大動脈とも言われる道路の橋梁をはじめ、地域生活を支える橋梁などがあり、各橋が持つ機能は多種多様だ▼本紙21日付の3~5面には「橋梁整備事業特集」を掲載。国や県、市町村においては、定期点検の結果などを踏まえ、橋梁の長寿命化などに取り組んでいる▼県土整備部道路環境課は、25年度事業費として121億5152万6000円を充て、橋梁補修・補強工事などを進める。ハード面だけではなく、土木技術者の担い手確保・育成のため、県内の高校生との協働による橋梁点検などの取り組みにも力を入れる。同課によると、久慈翔北高校に関しては、統合・新設に伴う新体制となったことを受け、来年度から開催する方向で検討していくようだ▼教育体制が変化していく中にあっても、担い手の世代が地域のインフラを知る機会を大切にしたい。高校生との協働による橋梁点検やインフラメンテナンス工事現場見学会などが、今年度も夏から秋頃にかけて開催される予定だ。
- ●つむじ風 5月21日
- 男性が積極的に育児を行うことができるよう社会機運の醸成を図ることを目的に2010年度から実施してきた広報事業「イクメンプロジェクト」。男性育休取得率が3割を超えたことなどを受けて、25年度から新プロジェク(PJ)への移行を検討している▼現在、後継事業の名称を募集している。有識者らの意見を踏まえ、事務局案として▽みんオペPJ▽イクシェアPJ▽脱ワンオペ▽共育(トモイク)PJ▽みんなで両立PJ▽その他の名称案―の6案が示されている。キーワードは「共有」だろうか▼厚生労働省はイクメンプロジェクトのHPを開設し、その中で「若者の声 集めてみました」を公開。育休について、若年層男性が84・3%、同女性は91・4%が取得したいという。約7割の若年層が就活で育休を重視しているとも▼先輩イクメン諸氏の後悔や反省、願いを込めて名称案に応募してみてはいかがだろうか。新プロジェクトへの移行をきっかけとして、男性の家事や育児の参画を阻害している職場の働き方の見直しにつながることを期待したい。
- ●つむじ風 5月20日
- 旧矢作小学校の跡地利用を計画している陸前高田市。先週は跡地内に整備を予定する2施設の設計を公告。工事に向けた準備が進められていく▼旧矢作小は、同市矢作町字愛宕下に位置していたが、周辺の小学校との統合により廃校。施設は解体済みとなっている。同小の敷地面積は約1万2000平方㍍。跡地利用については、地元から同小周辺の矢作地区コミュニティセンターと国民健康保険二又診療所、市消防団矢作分団第1部消防屯所の移転整備が要望され、市では3施設の建設を想定している▼このうち同センターと診療所の設計業務については先週、条件付一般競争入札により公告。現在の規模は、センターが鉄筋コンクリート造平屋建ての、床面積401・36平方㍍。診療所は鉄筋コンクリート造平屋建ての246・72平方㍍で、新施設も今のところ同程度の規模を見込んでいる▼事業が進めば、跡地は矢作地区の安全安心な暮らしや、交流を支える拠点になるはず。設計に地元の声を反映させながら、利便性の高い施設を整備してほしいと思う。
- ●つむじ風 5月19日
- 橋梁関係の施工では近年、長寿命化に向けた補修や補強がメインの事業となっている。路線の重要性や損傷の程度などにもよるのだろうが、「橋梁補修関連の事業には、予算要求通りに確保しやすい」といった声を聞くことがたびたびある▼道路構造物の5年に一度の点検が定められる契機となった12年の中央自動車道(上り)笹子トンネルの天井板落下事故、下水道施設の老朽が要因の一つとされる今年1月に発生した埼玉県八潮市の道路陥没事故をはじめ、インフラの老朽化が原因の事故が目立ってきている感がある。老朽化対策の重要性が広く知られ、各種長寿命化事業の進展が望まれる▼橋梁については、重要なインフラであるのと同時に、地域などにとってシンボリックな存在でもあるだろう。橋梁を架け替える際の検討委員会などを取材していると、地元の橋梁に対する熱い思いを感じる▼橋梁関連の工事にこだわりを持つ建設企業もあると聞く。費用対効果にとどまらず、地元の思いなども考慮したうえで、橋梁の維持へ必要な措置を講じていってほしい。
- ●つむじ風 5月16日
- 昨年ベストセラーとなった新書のタイトルではないが、すっかり本が読めなくなった。書評欄や書評サイトに目を通して読んだつもり。仮にも活字を生業とする一人としてお恥ずかしい限り▼書評サイトでは雑誌の休刊も話題に上がる。そういえば4月発行の6月号をもって『鉄道ジャーナル』が休刊となった。専門性や趣味性の高いジャンルは固定客への求心力が高く、ある程度の手堅さが続くと考えていた己の不明を恥じるばかり。なんだか恥じてばかりだな▼公共事業や建設業のあり方を問い続けた雑誌『建設オピニオン』を覚えている小紙読者もいるかと思う。同誌の廃刊は2010年。当時は公共事業をはじめ建設投資が先の見えない右肩下がりの時代。最終号のタイトルは「建設産業の明日への提言」だった▼人件費、資材価格、各種コストの上昇分も鑑みると、業界を取り巻く環境の厳しさは当時以上か。活字産業と紙メディアの退潮も著しいが、建設業界のいまを伝え、明日を考える小紙の使命を果たしていきたい。それには勉強。さて、何から読もう。
- ●つむじ風 5月15日
- 先ごろ、県土整備部の小野寺淳道路担当技監にインタビュー取材を行った。小野寺道路担当技監は「入庁以来、勤務地に居住し、地域住民の目線や現場を大切にしている」と話し、広大な県土において引き続き、切れ目なく道路の整備に取り組むとともに、適切な維持管理などに力を注ぐ考えを示していた▼小野寺道路担当技監は、公共交通機関やスクーターなどを利用して、まちや現場を巡り歩いているとのこと。「図書館などに行き、地域の歴史や水害の歴史などを学んでいる。土木は経験から学ぶもの」とも語っていた▼インタビューで話を伺いつつ、県土整備行政や建設業界の仕事の重要性を改めて考えていた。公共事業は、地図に残るだけではなく、岩手の歴史にも残る大切な仕事だ。より良く、住みよい岩手にしたい―。発注者、受注者という立場を超えて、その思いは同じだろう。小野寺道路担当技監は明るく笑いながら、自身の強い思いをこう語っていた。「地域に寄り添い、住民のために何かできる仕事がないかを考えている。地域にいる時間を大切にしたい」
- ●つむじ風 5月14日
- 気象庁が開発した「デジタルアメダスアプリ」。昨年4月から北海道を対象に一般公開していたが、4月25日から全国に対象を拡大して運用を始めた▼気象庁は、全国に約17㌔間隔で配置したアメダスの観測値に加え、気象衛星ひまわりなどの観測成果を組み合わせ、全国の降水量や気温、天気などを1㌔四方の格子状に分割。隙間なく解析(推定)した情報を作成し、その情報の活用促進を行っていたことが開発の背景にある▼実際に使ってみると、任意の14地点を登録でき、翌日までの天気や気温、降水量を確認できる。過去のデータでは、気温や降水量、日照時間について、今年・昨年・平年の推移をグラフで確認できる。任意の期間で気温や降水量、日照時間、降雪量の積算値を確認できるのは興味深い機能だと感じた▼自分のスマホを見ると、気象に関するアプリが五つほどインストールされていた。総合的なものから、雨雲や風などに特化したものまで。アプリを活用することで、急な天候変化に素早く対応し、適切な行動を取ることができるように心掛けたい。
- ●つむじ風 5月13日
- 震災の津波で全壊し、陸前高田市が同市気仙町今泉地区で復旧工事を進めていた県指定有形文化財「旧吉田家住宅主屋」。建物は完成し、23日午後1時からの一般公開を予定している▼吉田家住宅は、江戸時代に仙台藩領気仙郡24村を治めていた大肝入吉田家が、1802(享和2)年に建てた住宅。震災で住宅が全壊した後は、吉田家の当主や地域住民らが部材の回収作業に当たり、主屋の約6割の部材を回収。復旧工事は回収した部材を使用する形で、21年度から進められてきた▼主屋はかさ上げされた元の場所に、木造2階建て、延べ床面積317・64平方㍍の規模で再建。屋根の構造は、かやぶき、和瓦ぶき。施工は陸前高田市建設業協会が担当した。敷地内にある管理棟には、主屋を含む19世紀初期の旧今泉村集落を400分の1の縮尺で復元した模型も設置された▼主屋の復旧は、同市の復興関連で最後のハード事業となるもの。大きな節目を迎える中、震災から復旧した建物を活用しつつ地域の文化を守り伝え、次の歴史を築いてほしいと思う。
- ●つむじ風 5月10日
- 大型連休明けには、5月病のリスクが高まるとされるが、4月に入社した新卒者らが退職するケースも多くなると聞く。長期間の休日で英気を養うことで、物事を決断するエネルギーがたまり、休み明けに大きな決断がしやすくなることが、要因に挙げられている▼近年は、退職するにも、その意思を代理で伝えるサービス「退職代行」の依頼者数が、年々増えているという。連休明けは、急増する実態にもあるようだ▼新入社員を迎え入れた企業では、より人材が貴重となっている昨今でもあり、この1カ月大切に育ててきたことだろう。離職率が高いとされる近年の若手を定着させるべく、さまざま工夫も凝らしていることと思われる。貴重な人材の育成、定着に努めていきたい。▼参考までに、今年度の新入社員は「変化を呼び込む!新紙幣タイプ」と銘打たれている。最新技術が盛り込まれた新紙幣のように、多様性を受け入れ、最新のITリテラシーを身に付けており、受け入れる側は、コミュニケーションや育成の仕方を変化させていくことが必要とされている。
- ●つむじ風 5月9日
- 何もない場所で転びそうになることが増えた。調べると「老化による筋力低下」「バランス感覚の低下」「柔軟性の低下」など、嬉しくない言葉が並ぶ。特定の病気の疑いもあるようだが、怖いからその先は見ていない▼25年に入ってから県内建設業における休業4日以上の労働災害が増加傾向にあり、3カ月連続で前年を上回っている。業種別では土木と木造家屋、事故の型別では「転倒」と「はさまれ・巻き込まれ」が増加している。全産業を通じての労働災害は前年比24・5%の増で、型別で最も多い「転倒」は前年から40人の増と前年を大きく上回っている▼本紙で月1回掲載している連載企画「社員の健康は会社の財産~建太さんと学ぶ健康づくり」では、県予防医学協会から協力をいただき、建設業における労働者の心身の健康につながる話題を提供している。4月28日付で掲載した「ロコモティブシンドロームを予防しよう」は、増加する転倒災害にぴったりのテーマ。建太さんといっしょに片足立ちやスクワットに取り組み、転倒災害防止に努めたい。
- ●つむじ風 5月8日
- 大船渡市の大規模林野火災の鎮火宣言から、1カ月が経過した。林野火災の延焼範囲は約3370㌶に上り、迅速な復旧・復興の推進が大きな課題だ▼県によると、現地では森林の焼損により山の保水力が低下しており、土砂災害が起こりやすい状況にある。県土整備部砂防災害課では、土砂災害による被害の防止・軽減を図るため、緊急的な砂防堰堤の整備や既設堰堤の改良などを検討している。同課は今後、具体的な整備箇所を選定した後、調査設計や用地交渉などを進めていく方針だ▼県が全庁的な対応のために設置した林野火災復旧・復興本部推進会議においては、本部長を務める達増拓也知事が「単なる山火事ではなく災害だ。緊急的な土砂災害防止対策や大型土のうの設置などをしっかりと進めていく」と職員らに呼び掛けた。「緑が回復するビジョンを持って、全体の取り組みを進めたい」とも▼地元では、土砂災害の発生を心配する声も聞かれるとのこと。今後の本格的な梅雨や台風のシーズンを前に、地域に寄り添った対応が必要とされている。
- ●つむじ風 5月2日
- 日本塗装工業会県支部は今年、創立70周年を迎えた。先ごろ開かれた記念式典の席上、松田隆二支部長は「持続可能な塗装業界」に向けて、環境への配慮、安全確保、新技術の導入などへの取り組みの重要性に触れながら「業界全体の発展を目指していく」と決意を新たにした▼07年度に県営建設工事の入札制度が現在の形になった際、影響を強く受けた業種の一つが塗装工事。当時の本紙記事を見ると、07年度に発注された区画線を除く塗装工事32件のうち25件が低入札に該当。平均落札率は塗装工事全体で69・9%、低入札では67・5%だった。08年度上半期は22件の平均が68・5%、うち低入札15件の平均が65・1%にまで下落した▼県営建設工事における総合評価落札方式が見直され、工事種別に応じた評価項目の再区分や「チャレンジ型」の試行導入などが行われる。その実効性については今後の推移を見る必要があるが、持続可能な建設業界の実現を入札制度の面からも後押ししてほしい。当時のような底が見えない低価格競争は誰も望んでいないだろう。
- ●つむじ風 5月1日
- 県内のある市町村で道路整備を担当している職員に取材した際、技術職員数の不足を懸念する声が聞かれた。既に職員数が限られる中にあって、管理している道路などが数多いとのこと。山側の集落を通る道路のパトロールともなれば、片道だけでも相当の時間を要する▼その職員は道路の整備・維持管理だけではなく、災害査定の実施手続きや災害復旧の全体の流れなどについても、技術の継承を心配している様子。「私の退職後に何らかの大きな災害が起きた際、今の若い職員たちで対応できる体制をつくらなければならない」とし、今後力を入れて育成に取り組む考えを示していた▼特にも人口減少が進んでいる地方部の自治体では、同じような悩みを抱えているかもしれない。建設業界でも、次代の担い手への技術継承の重要性が課題となっている▼発注者や受注者、地域が連携して、日々の現場づくりを進めている。規模の大小に関わらず、インフラの整備や維持管理には技術・技能が不可欠。社会資本の重要性とともに、それを支える人の大切さに気付かされる。
- ●つむじ風 4月30日
- 宮古市が、中心市街地の商店街を通る市道末広町線で進めていた無電柱化事業。工事は3月に完成を迎え、整備された安全で快適な歩行空間は、市街地の活性化を後押ししていく▼整備区間は、同市末広町―大通1丁目間で、「末広町通り」を形成する延長470㍍。事業では、車から人中心の道路へ転換すべく、歩行空間を拡幅。段差など障害物が無い歩きやすい道路を確保したほか、景観性と安全性の識別に優れた舗装や、走行速度を抑制するためスラロームの車道線形も採用している▼27日の完成記念式典で、山本正德市長は「電柱を無くし終日一方通行とすることで、市民や観光客がゆったりと歩いて買い物ができる魅力あふれる道路となった」と式辞を述べ、まちなかのにぎわい創出に期待を込めていた▼同市ではクルーズ船の寄港が続いており、乗船客が市中心部などを散策する姿も見られる。宮古のメインストリートとして末広町通りを訪れる国内外の観光客も多いはず。生まれ変わった通りで回遊性を高め、地域ににぎわいと活力を波及してほしい。
- ●つむじ風 4月28日
- 県内路線の冬期通行止め区間の解除が進んでいるが、開通時期などから本県の広さ、地域差などを改めて感じさせられる。主要な箇所では、八幡平アスピーテラインが15日に解除となったほか、八幡平樹海ラインや国道342号の一関市須川~真湯間は25日に解除となった▼冬期閉鎖が解除となった路線も多い中、国道397号の奥州市胆沢平七沢~秋田県境間など、盛んと除雪が続く箇所もある。国道397号については、例年5月中旬ごろに解除となっている▼冬期通行止め区間の除雪を担当する業者に話を聞くと、地形や道路の形状、雪の降り方や融け方などそれぞれに特色があり、作業の手順などにも違いがあるのを感じる。長年担当し、現場を知り尽くすからこそなせる業だろう▼百戦錬磨のようなオペレーターだが、「同じ施工現場はない」と言われるように、毎年違った苦労に苛まれるようだ。とある路線では今シーズン、雪が硬く作業が捗らず大変だったものの、何とか例年通りの解除に漕ぎつけた。こうした技術力に地域の生活は支えられている。
- ●つむじ風 4月25日
- 国道282号佐比内工区を構成する(仮称)佐比内トンネルの貫通式が、八幡平市の現地で執り行われた。工区全体の開通は26年度中を目指しており、北東北の物流や観光の振興、安全で円滑な交通確保、東北縦貫自動車道の代替路としての機能強化が期待される▼佐比内トンネルといえば、昨年10月に地元住民や小学生を対象とした現場見学会で、児童からの質問が絶えなかったことを思い出した。聞くと児童たちは、通学中にも現場の様子を関心を持って見ていたとのこと。見学会に参加していた児童の一人からは、「将来トンネルを掘るための仕事に就くには、どのような勉強が必要か」といった質問も上がっていた▼建設業の知名度向上とイメージアップへの取り組みの中でも、現場見学会は有効なツール。時には地元を離れて、他県の現場を見に行くツアーもある。確かに大規模な建築物や土木構造物は建設業の魅力の一つに違いないが、少々地味でも地元にとって意義深い事業であれば、遠くの大規模事業以上に子どもたちの琴線に触れることもあるのでは。
- ●つむじ風 4月24日
- 県建設産業団体連合会(向井田岳会長)と県建設業協会(同会長)による建設業新規入職者教育。今年度の講習会は21、22日の2日間にわたって行われた。建設企業に入社した若者らが受講し、建設業の基礎を熱心に学んだ▼会場は、県建設会館の6階大会議室。受講生らは少し緊張した面持ちで受け付けを済ませた後、会場に入り、それぞれの席に座った。会場の入り口付近に貼ってあった座席表を見ると、さまざまな会社名を見かけた。多くの若者が地元の建設会社で活躍していくことを考えると、やはりうれしさを感じる▼受講生は2日間のカリキュラムで、県土整備行政や労働安全衛生をはじめ、社会人として必要な知識、建設業会計などを学んだ。向井田会長は「夢を持って働いてほしい」と若者を激励。同協会青年部連絡協議会の下舘康尋副会長は講師の一人として、地域建設業の魅力をPRしていた▼建設業を志して入職した若者たちは、現場での経験を通じて成長を遂げていくことだろう。建設業界を挙げて、岩手を支える人づくりを進めていきたい。
- ●つむじ風 4月23日
- 環境省は、光害や大気汚染、環境保全の重要性について関心を深め、観光や教育などの地域資源としての活用を目指し、18年度から星空観測を推進。このほど、24年度冬に実施したデジタルカメラによる夜空の明るさ調査結果を公表した▼調査方法は、デジタルカメラで天頂付近の星空を撮影。その画像データから等級という単位で夜空の明るさを測定している。等級が大きいほど夜空が暗く、20等級以上は一般的に天の川が見えやすいと考えられている▼今回のデータ投稿数のうち有効データ数は497件。投稿のあった継続観察登録地点の参加者の内訳は、団体が111団体で、個人が59人だった。20等級以上の地点は98地点あり、本県二戸市の古梅児童公園の近辺では、住宅地域ながら20・08等級となっている▼星空を見上げることは、精神的な癒やしや、観察力・集中力が養われ、想像力を刺激するとも言われている。働き方改革、生産性向上、担い手の育成・確保…。待ったなしの対応が求められる中、星空を見上げる時間があってもいいのではないだろうか。